「社会への不満や怒りが蓄積」
――フランスのデモや暴動の映像が日本でも盛んに流れています。これまでも「黄色いベスト」運動などで破壊行為が見られましたが、今回はとりわけ注目すべきなのでしょうか。
フランスでは社会への不満や怒りがずっと蓄積しており、何かが起きるたびにデモや暴動となって噴き出す傾向がある。2005年にはパリ郊外で、警察に追われた若者2人が変電所に逃げ込んで感電死し暴動が広がったため、非常事態宣言が出されている。
18年には黄色いベスト運動、23年には17歳の少年ナエルさんが警察官の制止を振り切ろうとして射殺され、暴動があったし、同年の年金改革案反対デモの際にもパリで暴動があった。昨年はサッカー欧州チャンピオンズリーグの決勝直後にも騒ぎが起きている。
ほかのデモと規模や参加者数を単純比較するのは難しい。ただ、黄色いベスト運動は参加者の世代や階層の幅が広かったのに比べ、今回はきっかけが高校生で、デモの中心も若年層という特徴がある。今後の趨勢は、労働組合などの組織がどれくらい加勢するかにかかっている。
――日本のSNSなどでは、「フランスの暴動は移民のせいだ。日本は移民を受け入れるべきではない」という主張も散見されます。
移民政策が直接的に暴動を引き起こしたという因果関係は見いだしにくい。移民をめぐる問題がないとは言わないが、すべての社会問題を移民に引きつけて議論するのは間違っている。そもそもフランス人の4人に1人がもともと移民を出自にしている事実を踏まえる必要がある。
例えば、黄色いベスト運動は移民とは関係がなかった。フランスでは移民がそれほど多くない時代から暴動を常としているから、暴動と移民に因果関係はない。
次に、移民の受け入れを決めたのはその時々の政権だ。フランスは国内で生まれた人に国籍を与える出生地主義をとっており、暴動に加わっているとされる若者には、移民ではなく、文化的な背景が違う「移民系」のフランス人がいる。自国民を劣悪な待遇に置いたままにしているのは誰か。移民ではなく、受け入れたホスト社会の問題だ。
――では、暴動を起こしているのは誰ですか。
逮捕者のプロファイルを確かめないと断言はできないが、大きく言って放火や略奪を目的とする「壊し屋」、アナーキスト集団の「ブラックブロック」、その他の抗議集団という3層から成っているとみられる。なお、ブラックブロックは名乗れば誰でもなれる分散型の集団で、一枚岩の組織ではない。
平均的なプロファイルをあえて想定するならば、郊外に住む、失業して行き場のない若者だろう。郊外の若者の失業率は、ほかの地域の倍近い。そこに移民系のフランス人が多いのは確かだと思う。
彼らにしてみれば、金持ちはブランド品を買えるのに、自分たちは買えない。「構造的な差別」という暴力を受けているから、物理的な暴力で対抗するという理屈になる。その存在を生み出したのは社会の側だ。
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