「大砲かバターか」は共通の課題
――フランスでの大規模なデモの背景には、財政面への不安があるとされています。
高校生が改善を訴える劣悪な教育環境の根源に、財政面での制約があるのは間違いない。折しも予算シーズンのさなかで、抗議行動が顕在化しやすい環境にもあった。フランスは債務が増加し財政赤字が膨張する中で、防衛費を増やさなければならない。移民流入に伴うコストも増加。その他の支出には抑制圧力がかかりやすい。
もっとも、「大砲かバターか」の選択を迫られるのはフランスに限らず、他の主要国も同様だ。公共サービスが充実している国ほど、それを削られてしまうことへの抵抗が強くなるのは自明の理。主要国が避けて通ることのできない共通の課題だ。
――マクロン大統領は一部で起きた暴動を「極左の過激派グループが扇動した」などと断定しました。ルコルニュ首相も高校生のデモについて、「左翼政党の不服従のフランス(LFI)の政治利用」などと非難。同党の関与をしきりに強調している印象があります。
現在は政党などが民意を得ようと、認知に働きかけて動く時代だ。2022年の大統領選の決選投票で、マクロン氏が(「極右」と称される)「国民連合」のル・ペン氏に勝利を収めたことをめぐり、「ル・ペン氏が大統領になったら大変なことになる」といった趣旨のメディアによるキャンペーン報道が奏功したため、との指摘もある。
LFIは今回のデモを政治利用をしようとしているかもしれないし、マクロン氏らの中道・右派はそうしたレッテルを貼りたいのかもしれない。一方で、ル・ペン氏らはデモを移民と結び付けて語り、トランプ米大統領も「制御不能な移民の大量流入がデモの原因」などとナラティブを展開する。
日本では物事を単純化しようとする傾向があり、「フランスには革命の歴史があるから、闘争を通じて主張をするスタイルに誇りを抱いている」などと理解しがちだ。しかし、同国の世論調査を見ると、多くの人々が暴力行為には反対だ。政治家などの言動や主張も慎重に見極める必要がある。
――隣国のドイツでは極右政党といわれるドイツのための選択肢(AfD)の躍進にみられるように、「極右政党と協力しない」という「防火壁」が揺らいでいるように見えます。フランスでも来年の大統領選で、ル・ペン氏当選の可能性が高まっています。
フランスにも「コルドン・サニテール(防疫線)」と呼ばれる考え方があるが、ドイツでAfDとともに「左翼党」が人気化しているのと同様、フランスでも国民連合とLFIという左右両極の党のプレゼンスが高まっている。
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