有料会員登録
ライフ

「専門家が占い師化している」――聞き手が望む答えを語る人が売れ、間違いを認める人が損をする現代社会

11分で読める
占いのイメージ
SNSの普及が専門家を「占い師化」させているという(写真:soono/PIXTA)

INDEX

専門家の見解が外れても、本人が「まちがえた」と認めないまま、世の中は次の話題へと進んでいく。そんな光景は、もはや珍しくなくなった。
評論家の與那覇潤氏は、新刊『なぜ「まちがえた」と言えないのか』の中で、それは単に専門家個人の資質の問題ではなく、社会のあり方そのものに根ざした問題であると説く。
本記事では、著者の與那覇潤氏と東京大学大学院経済学研究科講師の舟津昌平氏が、間違いを認められない社会の構造について論じ合う。全3回の第1回では、真偽と無関係に聞き手の望む答えばかり語ってしまう、専門家の「占い師化」を中心に論じる。

信頼が崩壊した学者とマスメディア

『なぜ「まちがえた」と言えないのか』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします。紙版はこちら、電子版はこちら。楽天サイトの紙版はこちら、電子版はこちら)

舟津:現代では、専門家のあり方が常に問われているなと本当に感じます。最近出た面白い論文では、アメリカのビジネススクールで、学生が「AIによるとあなたは間違っている」と先生に言ってくるようになった、という現象を考察しています(注1)。こうした現象の背景の一つとして挙げられているのが、大学は実践的じゃない、現実社会から乖離したことをやっているんじゃないか、という不信感だといいます。

與那覇:本書を出す意義とも重なります。書き始めた動機はコロナ禍以降の、専門家が間違えてもそれを修正しないまま、世の中が進んでいくことへの違和感でした。しかしいまや、大学の先生をはじめとする「エスタブリッシュメント」が、そもそも信用されなくなっています。大学の先生の発言なら、あるいは大手メディアの報道なら、まったく間違いということは「さすがにないだろう」と。そうした信頼感が、完全にメルトダウンしてしまいました。

わかりやすい例は、2024年秋の兵庫県知事選です。左右関係なくあらゆるメディアが「この人は政治家の資格なし」と報じていた斎藤元彦前知事が、選挙をしたら勝っちゃった。それ以降、25年冬の伊東市長選、つい先日の横浜市長選と、同じ形で出馬する人が増えてますよね。どれだけ批判されても、もうメディアへの信頼が空洞化しているから、逆に「反メディア票」を集めてワンチャン勝てるんじゃ? という期待があるわけです。

2/5 PAGES
3/5 PAGES
4/5 PAGES
5/5 PAGES

こちらの記事もおすすめ

あなたにおすすめ

ライフ

人気記事 HOT

※過去1ヶ月以内に配信した記事の閲覧数