信頼が崩壊した学者とマスメディア
舟津:現代では、専門家のあり方が常に問われているなと本当に感じます。最近出た面白い論文では、アメリカのビジネススクールで、学生が「AIによるとあなたは間違っている」と先生に言ってくるようになった、という現象を考察しています(注1)。こうした現象の背景の一つとして挙げられているのが、大学は実践的じゃない、現実社会から乖離したことをやっているんじゃないか、という不信感だといいます。
與那覇:本書を出す意義とも重なります。書き始めた動機はコロナ禍以降の、専門家が間違えてもそれを修正しないまま、世の中が進んでいくことへの違和感でした。しかしいまや、大学の先生をはじめとする「エスタブリッシュメント」が、そもそも信用されなくなっています。大学の先生の発言なら、あるいは大手メディアの報道なら、まったく間違いということは「さすがにないだろう」と。そうした信頼感が、完全にメルトダウンしてしまいました。
わかりやすい例は、2024年秋の兵庫県知事選です。左右関係なくあらゆるメディアが「この人は政治家の資格なし」と報じていた斎藤元彦前知事が、選挙をしたら勝っちゃった。それ以降、25年冬の伊東市長選、つい先日の横浜市長選と、同じ形で出馬する人が増えてますよね。どれだけ批判されても、もうメディアへの信頼が空洞化しているから、逆に「反メディア票」を集めてワンチャン勝てるんじゃ? という期待があるわけです。



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