きっと、新しい家に移り住むことも、道場やコートに飛び込むことも、折原さんにとっては同じことなのだろう。いつもと違う場所に身を置き、自分に新しい風を入れる。その繰り返しが、60代になっても“すべき”に縛られず、軽やかでいられる理由なのかもしれない。
大人が「枯渇しない」秘訣は、“一石二鳥”と“模様替え”
では、折原さんのように生き生きとした60代を送りたい人は、何から始めればいいのか。話の中に、2つのヒントがあった。
1つは、「一石二鳥」を狙う。始めるかどうかの基準は、まず興味があること。そこに、体のメンテナンスになる、仕事に使える、といったおまけが付けば言うことはない。
「私は弓道を始めたことをきっかけに、作品のなかにも弓道を登場させました。すると弓道をしていても『これは取材だから、仕事をサボってるわけじゃない』って思える。楽しくて、しかも何かの役に立つと思えば、納得感も上がりますよね。ご家族がいる方は、家族にも言いやすいのではないでしょうか」
「やって無駄なことなんて、何ひとつない」と折原さんは言う。確かに経験を重ねた大人だからこそ、新しい趣味はどんなものでも、これまでの人生とつなげることができそうだ。
もう1つは、暮らしに新しい環境を取り入れること。
とはいえ、誰もが拠点を4つ持てるわけではない——。そう水を向けると、もっと身近な一歩を挙げてくれた。
「模様替えだけでも、だいぶ気分が変わりますよ。インテリアを変えてみるとか、自分でDIYするとか。暮らしの環境を変えることは、自分の世界を作り直すことにつながると思うんです」
4つの拠点を持つ折原さんのような大きな変化はつくれなくとも、新しい趣味を始めたり、部屋の模様替えをしたり。
きっかけは「ちょっと面白そう」という好奇心でいい。
重ねてきた年月があるからこそ、新しく伸ばした枝は、これまでの人生のどこかにきっとつながっていく。そうして暮らしを動かし続ける人は、いくつになっても枯渇しないのかもしれない。



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