冷蔵庫の使い方にもこつがある。詰め込みすぎると奥の食材が見えなくなり、気づいた時には期限が切れていた、ということも。冷蔵室は詰め込みすぎず、収納率を5~7割程度に抑え、期限が近いものを置く「早く食べる場所」を決めておくとよい。
「(庫内を確認できるカメラ付き冷蔵庫など)高価な機器を買う前に、まず冷蔵庫内の食品を見える状態に保つことが大切」と井出さんは言う。
備蓄も「非常時まで取っておく方が安心」という思い込みが、しまいっぱなしのロスを生む。災害に備えて買った缶詰やレトルト食品、乾麺が非常袋の底で期限切れになっていたという人は少なくない。
政府は、食品を最低3日分、できれば1週間分程度備蓄するよう呼びかける。大切なのは、必要な量を確保しながら、期限切れにしないことだ。
井出さんが勧めるのは、食べた分を買い足す「ローリングストック」だ。普段から食べ慣れたものを循環させれば、非常時にも安心して口にできる。備蓄は「保管」ではなく「循環」と考える方が、無駄を出しにくいという。
「賞味期限が切れたら捨てるしかない」と思っている人も少なくない。しかし、その思い込みが食品ロスにつながっている場合もある。「消費期限」は、未開封で表示どおりに保存した場合に、安全に食べられる期限を示す。弁当や総菜、生鮮食品など傷みやすい食品に表示され、期限を過ぎたものは食べない方がよい。
一方、「賞味期限」は、同じ条件で品質が保たれ、おいしく食べられる期限を示す。期限を過ぎても直ちに食べられなくなるわけではない。賞味期限と消費期限の違いを理解することも、食品ロスを減らす第一歩になる。
「まずは期限の近いものから使う仕組みをつくり、期限切れにしないことが基本になる」(井出さん)
売り切る努力を評価
一方で、事業者側にも変化が求められている。食品の製造・小売りの現場では、欠品を避けようと多めに製造・発注したり、豊富な品ぞろえを維持したりすることが、売れ残りにつながる場合がある。
井出さんは「消費者側も『いつでも何でもある』ことだけをよいサービスと見るのではなく、売り切る努力を評価する視点を持ちたい」と話す。
家庭で食品を使い切れずに捨てていることは、その購入に使ったお金を無駄にすることでもある。最新データが示すのは、問題が家庭の外だけで起きているわけではなく、私たちの「よかれと思って」の中にも潜んでいるという現実だ。
「安いからまとめ買い」「丸ごと買う方が得」「備蓄はしまい込む方が安心」。そんな「思い込みエコ」を少しアップデートするだけで、家計にも環境にもやさしい暮らしに近づける。
(ライター・浴野朝香)
※AERA 2026年10月5日号

