9月30日午後1時半――。東京・原宿の「ラフォーレ原宿」前には、200メートルはあろうかという行列ができていた。あまりの長さに外国人観光客が写真を撮ったり、何の列かと聞くほど。そして午後2時からの予定を20分前倒しして配られたのは「号外」だった。
仕掛けたのは、スマートフォンなどデジタル製品を手掛けるイギリスの新興メーカー・Nothing(ナッシング)。韓国のアーティストBTSのメンバーであるVを、新たなグローバルアンバサダーに迎えたというチラシを「号外」として配った。ナッシングはこれに併せてヘッドホン「Headphone(1)Pro」(6万4800円)も投入し、Vを起用した映像などの大々的なキャンペーンを開始した。
この日、都内4カ所で号外は配布されたが、「入手した方がSNSに投稿するなど、すごい勢いで拡散された」と、ナッシングの日本事業を率いる黒住吉郎氏は語る。そして「新たなアンバサダー発表から、ナッシングのサイトのトラフィックも上がった」と言う。
「知る人ぞ知る」ブランド
すでにVはフランスのラグジュアリーブランド「セリーヌ」やアメリカのスポーツウェア「チャンピオン」、アメリカの飲料メーカー、コカ・コーラ、韓国の焼酎ブランド「チャミスル」、日本のAiロボティクスが展開するスキンケアブランド「Yunth(ユンス)」など、世界各国のさまざまなブランドのアンバサダーに就いている。
アンバサダー依頼が殺到するVの効果は、実際に凄まじい。例えば、YunthではCM動画が瞬く間に世界中で拡散されたほか、インスタグラムのフォロワー数も1カ月で約2.5倍に拡大した。
ファッションメディアのノーマナーズ・マガジンによると、8月10日にVをグローバルアンバサダーに起用すると発表したチャンピオンでは、発表から48時間で630万ドル(約10億円)のメディアインパクト価値(MIV、メディア露出効果を金額的に換算し、数値化したもの)があったとしている。
ちなみにこれは、ファッションショー期間中の平均的セレブのMIVの数十倍とみられる。
今回、Vをアンバサダーに起用したナッシングは、ガジェット界では「知る人ぞ知る」ブランドだ。中国出身のカール・ペイ氏が2020年にイギリスで立ち上げた同ブランドは、経営機能をロンドンに置く一方で、R&D(研究開発)と生産は中国・深圳を拠点としている。現在、37カ国でスマホやヘッドホンなどを展開し、累計販売台数は800万台に上る。25年の売上高は前年から2倍、設立以来の累計売上高は10億ドル超に達している。
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