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バトンを握りしめ、スタートラインに立つ。
短い助走のあと、73歳の松尾真弓さんはトラックを猛スピードで駆け抜けた。
2025年11月8日、東京・八王子市の上柚木公園陸上競技場で開催された、東日本マスターズ陸上競技選手権大会。
女子65歳以上(W65)4×100mリレーで、松尾さんは神奈川県チームの1走を務めた。2走へバトンを渡し、仲間につないだその先で、チームは1分00秒09を記録。10年間破られていなかった、ドイツチームによる世界記録を更新した。松尾さんにとって初めての、マスターズ陸上世界記録だ。
けれど、松尾さんは言う。
「世界記録を目指していたわけではないんです」
では、何を目指して走り続けているのだろう。
松尾さんは、神奈川県三浦郡葉山町にある「葉山にこにこ保育園」の園長をしている。50歳で、27年間勤めた横浜市職員を辞め、保育の道を選んだ。74歳になった今も、自然に囲まれた園で、子どもたちと元気に走っている。
「走ること」と「保育」。一見つながりのない2つの活動の根には、ひとつの思いがあった。
「女は大学に行くな」と言われた高校時代
1952年、東京の中野で3人兄妹の末っ子として生まれた。


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