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「虫」を追って見えた北朝鮮の素顔―カブトムシはゴミ扱い、日本では絶滅危惧種も…昆虫研究者が語る「祖国」と人々

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北朝鮮の首都・平壌。都市部でも豊富な昆虫が採集できる(写真:編集部)

INDEX

――記者は10回近く訪朝した経験がありますが、現地で虫の話をしたことも、出たこともありません。

この本では2008~10年までの3回の訪朝記録を元に執筆しましたが、おそらく朝鮮でも一般の人は虫に関心はないでしょう。

08年に訪朝したときは、平壌のホテルで「祖国で昆虫を採れるなんて!」と意気込んでいました。頭にヘッドライト、首に吸虫管を下げ、左手に毒瓶、右手に直径60センチメートルの虫網という完全装備をした私がホテルのロビーに出た際、守衛さんの第一声は「おい! 君! いったい何をしているだ?」でした。

「昆虫採集です!」と答えるときょとんとした顔をしてこちらを見ているわけです。またホテルのレストランのウェイトレスからは、私が滞在して2週間ぐらい経っても、「あなたは私をずっとからかっていますね。意地悪な方です」と言われたほどです。

当時の朝鮮で一般の人にとって虫とは「ほぼ・かなり・大部分・どんなときでもゴミ」と言えるぐらい、関心のない対象でした。

カブトムシやクワガタムシが乱舞する平壌市内

――平壌中心部の宿泊先でも、カブトムシやクワガタムシが飛んできたり、日本では絶滅危惧種となっているタガメが飛んでいると書かれています。日本では見ることが難しい光景ですね。

そうです。日本ではカブトムシなんてお金を出して買う対象ですし、タガメなんてもはや飛んでいる光景などなかなかお目にかかれません。それでも「このようにお金を出してまで虫を買う人がいるわけない」「(タガメを)こんなグロテスクな虫なんて」と踏みつぶしているわけです。最初はショックを受けました。

――実際に、北朝鮮における昆虫の生息環境はどのようなものなのでしょうか。

日本では約4万種(推定で10万種)の昆虫が確認されていますが、朝鮮半島では約3万種ほどが確認されています。ただ戦後の混乱、朝鮮戦争、生活の厳しさなどもあり、研究の手が届いていない自然環境が多く残されています。自然保護区となっている名勝地・妙香山(ミョヒャンサン)で採集活動を行いましたが、ここも私の専門のカミキリムシをはじめ多彩な昆虫が生息しています。

日本では想像しにくいかもしれませんが、日本の環境規制も厳しいですが、朝鮮でも環境規制はかなり厳しいのです。人体に悪影響を与えるものに対する監督・審査は非常に厳しい。農薬規制も厳しいし、未舗装の土地・道路が多いのですが、土地をコンクリートで不必要に固めていないのです。

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