探究を重ねるうちに、思わぬ花が咲く。そんなアーティストの思考と探究を如実に表す例として末永氏が挙げるのが、パブロ・ピカソの「The Bull(Le Taureau)」だ。シンプルな線で描かれた象形文字のような作品だが、名前が表す雄牛にも見えるし、他のものにも見える。
「実は、この作品に至るまでにピカソは10枚の『The Bull(Le Taureau)』を描いています。それらは単なる下書きというより、描いては何かを思いつき、また描いては思いついてまた描く、ということを繰り返したようにも思えます。この作品のピカソのように、『思いついてやってみる』を繰り返し、最終的に思いもしなかったところに辿り着く。そのプロセスも評価できるといいなと。そして、その受け皿に探究学習がなればいいなとも思うのです」
子どもの感性の扉が開く瞬間がある
探究学習というとどうしても科学探究と捉えられがちだが、アートの探究学習があってもいいのでは、と末永氏は話す。
「探究学習では論文やレポート、プレゼンでアウトプットすることが多いですが、アート的な成果物や身体的なパフォーミングアーツなどでもいいのでは。以前、和歌山市の小中学生を対象にした地球環境に関する探究学習に4年にわたって関わらせていただいたことがあります。その時、表現の形を変えたら感じられるものや考えも変わってくるのではと思い、『言語化によるアウトプットにこだわらず、アート作品で表現してもいい』とお伝えしていました。
すると、地球環境について学んだことを演劇で表現する学校が現れました。お子さんたちが劇や歌、構成を考えるうえで感じたことは、プレゼンシートを作る際に考えることとはまた違うはず。アプローチを広げるだけで、探究学習は大きく広がるのではないでしょうか」
自分なりの問いを立てるために必要なのは、世界からの働きかけを受け入れ、受け止めることが大切だと末永氏は言う。例えばアート作品を見る時、大人は特に、「誰のいつの作品で、何をどんな技法で表現している」といった事前情報を確認するような作業になりがちだ。
しかし、自分なりの問いを立てるために必要なのは、自分がその作品を見て感じたことを真正面から受け止めることだ。末永氏はそれを「『感性の扉』を開くこと」と表現する。そして、末永氏は出張授業やワークショップで子どもたちの「感性の扉」が開く瞬間を何度も目撃してきたという。


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