(2)現場の言葉や判断基準が反映されていなかった
第2のポイントは、現場を理解しないままの提案になっていたことだ。提案書の中身は、一般論としては正しかったのかもしれない。しかし、そこで実際に働くエンジニアや生産管理の人たちの考え方、日々の判断基準は、まったく反映されていなかった。彼らの物の見方を知らずに書かれた提案は、どれだけ整っていても、現場の人間には「絵に描いた餅」として映ってしまった。
(3)精度の高さそのものが、かえって不自然さを際立たせていた
第3のポイントは、不自然なほど提案書の出来栄えがよいことだ。何度も足を運んでいるわけではないのに、これほど精度の高い提案書や見積もりが出てきたことに、顧客は強い違和感を覚えたのだ。精緻であればあるほど、かえって「らしさ」が浮いてしまう。ギャップの大きさこそが、信用を失わせる決め手になったのである。
「コミュニケーション」のバランスを考えよう
こういった点を踏まえたうえで、今こそコミュニケーションをもう一度、再定義する必要があると思う。AI時代だからこそ、なおさらである。整理すると、次の2つに分けられる。
(2)非言語コミュニケーション――どんな表情で、どんな頻度で、どんな存在として接してきたか
それでは、簡単に説明していきたい。
(1)言語コミュニケーションとは、伝えた言葉の中身そのものだ。論理や情報の正確さは、ここに含まれる。正しい情報を渡せば、AIはそれなりの成果物を出力してくれるだろう(ただし丸投げはNGだ。あくまでも“たたき台”が出るだけ、である)。
(2)非言語コミュニケーションとは、言葉以外のすべてを指す。表情、声のトーン、身振り手振り、そして“行動”や“姿勢”も入る。だから「どれだけ汗をかいたのか」も、この非言語コミュニケーションに入るのだ。
AIやデジタルツールは、言語コミュニケーションの精度を大きく高めてくれるだろう。しかし、人を動かすのは、明らかに「感情」である。人間は意識しない限り、そもそも合理的な判断ができない生き物だ。その場その場の「感情」「感覚」によって判断が変わる。だからこそ非言語コミュニケーションが大事なのだ。
この原理原則を無視したまま、言葉だけを磨いても、人の心はなかなか動かない。AI時代だからこそ、私たちは、この見えにくい非言語コミュニケーションに、改めて目を向ける必要があると私は思う。


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