有料会員登録
ビジネス

包装パン事業を手放した「神戸屋」、リブランディングで見えてきた"次の100年"の戦い方 街のパン屋も支える老舗の現在地

7分で読める
リブランディングを進める神戸屋、桐山晋社長を直撃した(撮影:今井康一)
2/4 PAGES
3/4 PAGES
4/4 PAGES

例えば、2015年に食品表示法が施行され、2020年4月に完全移行した新制度では、容器包装して販売する加工食品には原材料やアレルゲン、賞味期限などについて適切な表示が求められるようになった。ラベル作成に四苦八苦する個人営業のパン屋、菓子屋は多い。

「そのフォーマットをお渡ししたり、レシピを送っていただいて作成についてサポートさせていただいたりしています」。そして、神戸屋のオンラインサービスに入ることで、店の知名度が上がるメリットもある。

そこまでフォローするのは、「お客様にもいいパンに出合っていただきたいから。われわれは100年前から、パンを日本に普及させる役割の一部を担えたとは思っています。しかし、これからもっと広げるには、パンの価値をもっと高める必要がある。例えば夕食にパンを選ぶ人はあまりいらっしゃらないし、ライ麦パンなどまだ魅力に気づいていない人が多いパンもあります」と話す。

質と価値を高める方向にシフト

コロナ禍以降、パンを取り巻く環境は大きく変わった、と桐山社長は言う。

「その1つはお客様の意識。以前はどちらかと言えば、価格やトレンド重視の傾向が強かった。しかし今は、本質重視。基本的なものが、当たり前においしいことを求められています。また、業界側も、食品ロスに対する意識が変わりました。以前は機会を逃さないよう閉店間際までパンをたくさん並べていましたが、生産量の最適化や冷凍技術の活用といった進化が見られます」と述べる。

この発見も、神戸屋が質と価値を高める方向にシフトした要因となっただろう。

大量生産・大量流通を担ってきた包装パン事業を手放し、神戸屋は、質や価値を高める方向へ舵を切った。

そして桐山社長のコロナ後の変化への指摘は重要だ。これは、売り手も買い手も、コロナ禍で足元を見つめ直したということではないか。

効率や規模の拡大だけでなく、本当に価値があるものを選び、長く残していく。そうした意識は、食の世界だけでなく社会のさまざまな場面で強まっているように思える。神戸屋のパンの質向上とその価値を認めてもらう活動は、私たちも何を大切にすべきか、そしてそのために何を切り捨てるのかという問いにつながっている。

(撮影:今井 康一)

こちらの記事もおすすめ

あなたにおすすめ

ビジネス

人気記事 HOT

※過去1ヶ月以内に配信した記事の閲覧数