数字で見る限り、4月に広がった批判は、公開直前の今、ほぼ勢いを失っている。
しかし、ファンの間で熱を帯びてきているのが、シリーズを彩ってきたメインキャラクターの恩田すみれ(深津絵里)が本作に登場するかどうかだ。すみれの存在は、公開直前になっても明らかになっていなかった。
9月に入っても「すみれさんは出るのか?」という声が絶えず、Yahoo!リアルタイム検索でも「すみれ 出る」という言及は直近30日間で275件、ポジティブ比率78%と、高い関心が続いている。
「すみれ」の登場が熱望されるワケ
なぜここまで、“オリジナルメンバー”の登場が待望されるのか。手がかりになるのが、「オリジナルの価値」をめぐる心理学の知見だ。ある実験では、見た目がまったく同じに複製された品物であっても、人は“本物”のほうに高い価値を感じ続けることが繰り返し示されている(※3)。
この背景にあるのが「心理的本質主義」と呼ばれる考え方で、人はモノや出来事に、目には見えない“本質”のようなものが宿っている と直感的に感じ取る傾向がある。どれだけ精巧な代替であっても、その“本質”だけは受け継げないと感じるからこそ、オリジナルへの特別な思い入れが生まれる。
これは、俳優とキャラクターの結びつきにも当てはまりそうだ。青島俊作というキャラクターは、織田裕二という“オリジナルの体”を通して初めて成立したものとして、29年間ファンの記憶に刻まれてきた。真下正義を演じるユースケ・サンタマリアら、他のオリジナルメンバーが本人として画面に映ること自体も、「本物のシリーズが帰ってきた」 という実感を支えている。
仮に別の俳優が同じ役を演じたとしたら、“本質”が失われたと感じるファンは少なくないはずだ。すみれの登場をめぐる臆測がこれほど盛り上がるのも、単なる懐古趣味というより、この“複製できない本物”を求める人間の根源的な傾向の表れだと考えられる。


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