提案の下地には法人営業の経験もある。益田氏は以前、携帯電話販売を手がけるグループ会社に出向し、法人向けにPCも売っていた。そこで必ず言われたのが「タッチパネルはないのか」だった。VAIOの法人向け機はカスタマイズモデルでしかタッチパネルを選べず、顧客が画面上でサインをもらう用途に応えられなかった。標準仕様でタッチパネルを載せることが法人向けにも重要だという認識が、提案につながった。益田氏は「お客様の使い方を誰よりも知るノジマと、それを形にできるVAIOの技術、この組み合わせでならこれまでにない一台をお届けできる」と語った。
林氏はこの提案に「複雑な思い」もあったと明かした。VAIOはフリップ機構に自信を持って製品化したものの、「大きな手応えを得られないまま、後継を出せずに失速していった」という実感があったからだ。店頭で高く評価されていたという話は意外だったという。
ただ、同じ製品でもノジマの店頭での展開は他の販路と明らかに違っていた。ノジマは価格の高い安いだけで商品を決めるのではなく、顧客一人ひとりの要望を聞き取ったうえで最適な商品を提案するコンサルティングセールスを続けてきた。フリップ機構搭載モデルも、店頭で顧客に画面を裏返してもらい、機構の面白さを体験させたうえで売っていた。林氏は「私たちは商品を伝えきれていなかったのではないか」と振り返り、機構そのものではなく伝え方に問題があったと結論づけた。
最初の注文は留め具をなくすことだった
かつてのフリップモデルは、画面を固定する留め具(ラッチ)を手で外してから裏返す仕組みだった。益田氏がVAIOに最初に求めたのは、この一手間をなくしてすっきりした形にすることだったという。VAIO Tは留め具の代わりにマグネットで画面を保持し、外す操作なしにそのまま裏返せる。画面そのものは曲がらない。


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