順調な数字の裏で、社内には別の見方があった。林氏は「この12年で信頼される存在にはなったが、驚きを期待される存在ではなくなってきたのではないか」と語った。法人ユーザーから届く意見は保守的なものが多く、製品も保守的な方向に寄っていった。挑戦の必要は感じながら、目の前の顧客の声を優先する日々が続いていたと林氏は明かした。
2025年にノジマの傘下に入ったことで、この流れが変わった。ノジマの野島廣司社長はスピードとユニークさを強く求め、林氏によると「理想はもっと高く持て」と言われているという。林氏は傘下入りで最も大きかった変化を「マインドチェンジ」だと表現した。会社としてもっと挑戦すべきだという後押しを受けて舵を切り、信頼される道具であり続けながら新しい体験を提案するブランドへ進化すると宣言した。
売り場で評判だった機構が「早すぎた商品」で終わった
ノジマ側からフリップ機構の復活を提案したのは、PCと周辺機器のマーチャンダイザーを務める益田巧氏だ。益田氏はかつて店頭でフリップ搭載モデルを勧めていた。顧客が画面を裏返して「すごい」「面白い」と声を上げ、満足して買っていく場面を何度も見てきたという。それだけに、後継機が途絶えたことを残念に思っていた。
益田氏はその理由を「早すぎた商品」だったからだとみる。当時はPCのタッチ操作が今ほど普及しておらず、顧客の要望も少なかった。Windowsのタッチ対応も発展途上だった。今は各社の上位モデルがタッチパネルを当たり前に載せており、「時代がようやくこの機構に追いついてきた」と益田氏は語った。


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