このように、ある意味で存在感を高めた日本ブランドではあったが、自動車ジャーナリズムの視点から現状を分析するならば、その取り組みには、まだまだ大きな伸びしろがあり、もったいないと感じる点が多い。
これまでの日本のメーカーは、このイベントを単なる商品展示と捉える傾向が強すぎた。残念なことに、日本車のスタンドはお土産をもらう休憩スペースくらいにしか、見られていなかったのだ。
どれほどのパフォーマンスを備えていても、そこに「なぜこのクルマが存在するのか」「どのような人間がどのような想いで造り上げたのか」というストーリーや、ブランドを象徴する強いアイコンが伴っていなければ、超富裕層やコレクターたちは一瞬足を止めても、すぐに素通りしてしまう。
そもそも、日本の自動車メーカー経営陣の中にモントレー・カー・ウィークが重要なプロモーションとブランディングの主戦場であるという認識を持つ者が少なすぎるのだ。
Ken Okuyama Carsに見るラグジュアリーカーの本質
もったいない一つの例をあげてみるなら、失礼ながら、ホンダの取り組みだ。ザ・クエイルはモータースポーツの祭典であり、せっかくHRCが出展する以上、アキュラとの繋がりは明確であるべきだ。
ところが、両者がまったくリンクしていない。それがブランドの方向性として相容れないものなら、そもそもここに出展する意味が乏しいのではないだろうか。
日本車として、極めて示唆に富む事例を見せてくれたのは、ペブルビーチのコンセプトローンに出展したKen Okuyama Carsである。
工業デザイナー奥山清行氏率いる同社は、ニューモデル「Kode89」を世界初公開し、Made in Japanの真髄を堂々とアピールした。
北米および世界のハイエンド自動車界において絶大な認知を誇る奥山氏が自ら車両の傍らに立ち、訪れるゲストと対話を交わすと、それだけで世界の自動車界の大物やトップコレクターたちが自然と集まってくる。
彼らは単に機械を買うのではなく、デザイナーの哲学、ブランドの美学、そして人脈という人間的な価値を買っているのである。


※ログイン後、コメント入力が可能です。