この地がいかに異次元のマーケットであるかを象徴する出来事が起きた。RMサザビーズのオークションに出品された フェラーリ「ルーチェ テーラーメイド “シャシー0”」を巡る一件だ。
マラネッロ初のフル電気自動車として登場した「ルーチェ」は、伝統的なV12エンジンを排したパワートレインと大胆なスタイリングにより、発表当初からエンスージアストの間で大きな波紋と賛否両論を呼び起こしていたモデルである。
事前の予想落札価格はカタログ上で110万ドル(約1億6700万円)以上とされていたが、ハンマーが下りた瞬間、提示された金額はなんと4000万ドル(約60億8600万円)であった。
このハンマープライスは、新車のフェラーリとして最高額であると同時に、電気自動車、そして21世紀に製造されたあらゆる車両の中で、世界最高記録を打ち立てるものであった。
カタログ上の新車基本価格が約70万ドル(約1億0650万円)とされる車両に対して、なぜこれほどまでに莫大な金額が支払われたのか。ここにはモントレーという場が持つ、ハイエンドビジネスの構造が凝縮されている。
なぜ、4000万ドルもの価値が生まれたのか?
第一に、これが単なるカタログモデルではなく、テーラーメイド部門とデザインスタジオが手掛けた世界に1台の特注仕様(ビアンコ・マドレペルラ・セミグロスのアウターに特注メタリックレザーの内装)であり、なおかつ“シャシーナンバー0”というブランド史に永遠に刻まれる最初の生産車であった点だ。
第二に、売却益の100%がフェラーリ財団を通じて慈善事業に寄付されるチャリティオークションであったことだ。
落札者は87歳の著名な投資家であり慈善家でもある、ハーバート・ワートハイム氏。同氏は前年にもワン・オフの「デイトナSP3」を2600万ドル(約40億円5500万円)で落札した人物である。


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