でも、「もう年だから仕方ない」とあきらめる必要はありません。
大切なのは、「歩けなくなってから対処する」のではなく、「歩くための準備」を日常に取り入れることです。関節や筋肉は、急に鍛えようとしても思うようには応えてくれませんが、軽い刺激を継続的に与えることで、少しずつ確実に機能を取り戻していきます。こうした積み重ねが、転びにくい体と、安心して歩ける毎日をつくっていくのです。
「最近、疲れやすくなった」
「以前より歩くスピードが落ちた」
「食欲があまりわかない」
こうした心当たりを、単なる「年のせい」と片付けてはいませんか?
実は、健康な状態から介護が必要な状態へと向かう、その中間の段階を指す重要な言葉があります。それが、今注目されている「フレイル」です。
フレイルとは、日本語で「虚弱」を意味します。かつての「元気な自分」と、助けが必要な「要介護状態」の、まさにグラグラと揺れ動く境界線に立っている状態です。
フレイルが恐ろしいのは、本人も気づかないうちに、静かに、そして着実に進行する点です。「転ぶのが怖くて外出を控える」ようになると、足腰の筋力が急激に低下します。筋力が落ちるとさらに歩行が不安定になり、ますます外に出なくなる……。この「恐怖と衰えの悪循環」に一度足を踏み入れると、坂道を転げ落ちるように要介護状態へと突き進んでしまうのです。
高齢者の「3人に1人」が直面する現実
WHO(世界保健機関)の報告によれば、65歳以上の3人に1人が毎年転倒を経験しており、80歳以上ではその確率は2人に1人にまで跳ね上がります。
フレイルの状態にある方が一度転倒し、太ももの付け根や背骨を骨折してしまうことで、そのまま寝たきりになってしまうケースも少なくありません。昨日まで普通にこなせていた「買い物」や「入浴」ができなくなる。そんな日常の喪失が、フレイルの背後に隠れているのです。


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