僕はこれまで、多くの生徒に勉強を教えてきました。その現場で感じるのは、学力が伸びにくい生徒ほど、「わからない状態」にとどまることが苦手だということです。
数学の問題が解けなければ、5分も経たないうちにスマートフォンで解説を検索する。文章が長ければ、要約だけを読む。先生に質問されると、自分で考える前に「答えを教えてください」と言う。
いまは検索だけでなく、生成AIに問題を入力すれば、数秒でそれらしい解説が返ってきます。これは非常に便利です。しかし、便利だからこそ、「自分で考える前に答えを得る」という癖もつきやすくなっています。
すぐに答えを見ると、「わからない」という不快感はいったん消えます。しかし、自分で試行錯誤していないため、考えるための型は残りません。そして次の問題でもわからなくなり、またすぐに答えを見る。この繰り返しでは、「考える筋力」がなかなか育たないのです。
東大生に多かったのは、その反対の行動でした。
すぐに答えを見ない。15分考えてみる。一冊の参考書から逃げずに繰り返す。そして、問題が解けたときに得られる、少し遅いけれど深い手応えを選ぶ。
学力を伸ばすうえで本当に大切なのは、「正解を知っているか」以上に、「正解がわからない時間を確保できるか」なのかもしれません。
東大生も、誘惑に強いわけではない
では、東大生は生まれつき意志が強く、ショート動画やSNSの誘惑にも簡単に勝てるのでしょうか。
僕は、そうではないと思います。
今回のアンケートとは別に、これまで東大生に勉強法を聞くなかで、スマートフォンの画面を白黒のグレースケールに設定している人に何人も出会いました。カラフルなアイコンの刺激を減らし、スマートフォンを魅力的に見えにくくするためです。
「移動中はYouTubeショートやTikTokを開かない」と決めている人もいました。「一度開くと、降りる駅を忘れるほど見てしまうから」だそうです。
通知を切る。SNSアプリをホーム画面から外す。勉強中はスマートフォンを別の部屋に置く。特定の時間帯はアプリを開けないようにする。
彼らは、「自分は誘惑に負けない」と考えているのではありません。むしろ、「自分だって、簡単に刺激へ流される」と知っている。だから、意志の力だけで勝とうとせず、誘惑に触れにくい環境を先に作っているのです。
ここが、大きな違いなのではないでしょうか。
誘惑に強い人とは、誘惑を前にして毎回勝てる人ではありません。そもそも誘惑と戦う回数を減らせる人なのです。


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