筆者も15分のコースを体験した。カーテンを閉じると、プラネタリウムを思わせる暗がりに穏やかな音楽が流れる。シートは腰を柔らかく揉み込むように動き、眠りに落ちなくても気持ちが緩んでいく。残り3分になると音楽が朝を思わせる前向きな曲調に変わり、シートが腰から押し上げてくるので、自然と伸びをする姿勢になった。
ただ、周囲の話し声が耳に入ってくる点は気になった。仮眠室ほどの設備でなくても、静かな場所を選んで置く配慮は要りそうだ。
3〜4人で売るトヨタの新規事業
この装置を作って売る体制は3〜4人で、数百人が関わる車両開発の数百分の1にあたる。生産能力も年200〜300台にとどまる。「新規事業は新しいものなので、イノベーターぐらいしか買ってくれない。あまり人件費もかけられない」と金子氏は説明する。投資も人手も、あえて抑えている。
この規模では、社内の販売網ともかみ合わない。トヨタの販売店に扱いを持ちかけたところ、自動車ではないものをなぜ売るのかと返された。「断られたというのが正直ありますね」と金子氏は明かす。数十万台の供給を前提とする販売店の商売に、年数百台の商材は乗らない。月20台を安定して売れるようになるまでは、金子氏らが自ら顧客を回り、「小さくやっていくしかない」と話す。提供は購入またはリースの形をとる。
その売り先の一つ、全日本空輸(ANA)では、整備士が午前2時の整備点検の前に仮眠を取るようになった。以前はコーヒーで乗り切っていた作業に、すっきりした頭で向かえるようになったという。経営側も、ミスを防ごうと現場に厳しく言う場面が減ったそうだ。
一方、オフィス企業への営業で壁になるのは都心の賃料だ。虎ノ門や六本木に拠点を置く企業に導入を持ちかけると、仮眠のためだけにスペースを増やせないと断られる。TOTONEの横幅を737mmまで詰めたのはこのためで、休憩エリアを元々持つ工場のほうが導入しやすいという。


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