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「自動運転の想像以上の安心感」と「石破氏の独特なしゃべり方の通訳」から考える、AIに置き換えられることの限界点

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池上彰氏が考える、絶対に「AIに置き換えられない」こととは(写真:metamorworks/PIXTA)
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現地でその理由を尋ねると、「コーランが禁じているのは『葡萄酒』であって、ビールやウィスキーは書いていない」という答えが返ってきました。

確かにコーランが書かれた約1400年前のアラビア半島では、酒と言えばワイン(葡萄酒)だったわけですから、それ以外の酒については明記されていません。だから「ビールは飲んでいい」という解釈をする人が一定数いる、というのです。こうしたことは、実際に現地へ行き、人々と直接話をしなければ、なかなか見えてきません。

教科書やインターネットの情報だけを見ていると、「イスラム教徒は酒を飲まない」という一文で理解した気になってしまいます。しかし現実の社会は、そんなに単純ではありません。宗教の教えがあっても、国や地域、家庭環境、人それぞれの価値観によって、実際の行動は大きく異なります。

別の「現場」の例を挙げましょう。私が警察の取材をしていた時代、逮捕状の仕組みを調べていくと、教科書的には「裁判所が発行する」で終わりです。しかし実際の現場では、「逮捕状を出す当番の裁判官に申請する」という運用があります。

裁判官によって、証拠が揃っていないと逮捕状を絶対に出さない人と、「警察が調べているなら」とすぐに出してくれる人がいる。そのことを現場の警察官たちは経験則として知っていて、「この裁判官なら通る」「この人だと厳しい」という、書類の向こう側にある「人間の癖」までを読み取って逮捕状請求の日を選んで動いています。

これはどの専門書にも書いていない、現場特有の「相場感」です。AIが提供できるのは「記録されたこと」だけです。記録されていない現場の運用や暗黙の了解、空気感などは、人間が現場に足を運び、何年もかけて蓄積していくしかありません。

石破前総理の「独特なしゃべり方」をどう通訳するか

私はテレビで解説をする際、単なる事実の要約ではなく、「このことをイスラム教の人が聞いたらどう反応するか」「この法律が実際に運用される現場でどんなことが起きているか」と考えながら、できるだけ立体的な知識を視聴者の方に伝えたいと思って話しています。

それは現地に行き、人と話し、失敗し、誤解し、驚いた経験の総体から生まれています。こうした身体で覚えた知は、まだしばらくAIには代替されないと思っています。

「現場」ということでは、石破茂前総理が初めてトランプ大統領と会談した際のエピソードも示唆に富んでいます。

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