車の屋根の上などには360度を捉えるカメラが常時回転していて、自分の車の周囲に何がいるかが常にモニターに表示されます。後続車のサイズ、対向車線の状況、歩行者の位置など、すべてリアルタイムで把握しています。これが安心感を与えてくれるのです。
驚いたのは、前の車がトロトロ走っていると追い越し車線に移り、スピードを上げて追い抜いたことです。人間のような「判断」を自動でやっている。車と車の隙間から歩行者が飛び出すと、スッと減速して避けました。率直に言って、下手な人間のドライバーが運転するよりよほど安心感がありました。
ただし、これがロサンゼルスで実用化されているのには理由があります。ロサンゼルスは、道路の幅が広く、街の構造が比較的シンプルだからです。碁盤の目のように道路が整備され、歩行者も日本ほど多くありません。自動運転AIにとっては、比較的「読みやすい環境」なのです。
一方、日本の道路事情はかなり複雑です。住宅街には細い路地が張り巡らされ、自転車や歩行者が突然飛び出してくる。宅配業者の車が停車していたり、工事で道路が狭くなっていたりもします。さらに、雨や雪、夜間の見通しの悪さなど、AIにとって難しい条件が数多く存在します。
それでも東名高速や東北自動車道のような長距離高速道路では、トラックの自動運転走行実験が進んでいます。市街地は人間が運転し、高速道路に乗ったら自動運転に切り替えてドライバーが休息を取る、そういう「部分的な自動運転」の実用化は、日本でもそう遠くない将来に実現するかもしれません。
自動運転が普及すれば、トラック運転手不足は解消に向かう。しかし同時に、プロのドライバーという職業は大きく変わる。これもまた、AIが仕事を変える一例です。
「身体で覚えた知」は代替されない
一方で、私がAIに絶対に代替できないと確信していることがあります。それは「現場で身体を通じて得た経験」です。
イスラム教についての話をするときに、「クルアーン(コーラン)では飲酒が禁じられている」と一般的に説明されます。ChatGPTにも同じことを聞けば、丁寧な説明が返ってくる。しかし私が何度も中東を取材してわかったことは、現地ではイスラム教徒でも酒を飲んでいる人がかなりいる、ということです。


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