有料会員登録 東洋経済オンラインとは
ライフ

入院できる病院もない《廃墟の残る、人口1007人の町》で全戸にタブレット配布…「ほぼ全員が反対した」政策を推進した結末

11分で読める
笠置町
自然が多く、人けのない笠置町内の様子(写真:筆者撮影)
2/6 PAGES
3/6 PAGES
4/6 PAGES
5/6 PAGES
6/6 PAGES

「シビックプライドっていう言い方がよく出てますけど、やっぱりみんなが笠置町に誇りを持って、先人たちの誇りも、もう一回脚光を浴びれるような活動をしたいんです」

たとえ300人になっても、「この町を選んだ300人」に

こうしたアイデアが次々と湧いてくる背景には、山本さんなりのものの見方がある。制度や予算からではなく、まず目の前の住民と向き合うところから始まる政策の発想だ。また、人口や観光客数など数字の上では弱小と捉えられがちだが、これこそを資源に使いこなそうとしている。

笠置町の玄関、笠置駅(写真:笠置町提供)

現在、山本さん自身の日常はこんな感じだという。

「週末町を歩くと、あちらこちらで声をかけられて、1日帰ってこれないですよ。ちょっと駅前まで用事があるのに(笑)」

住民と夢を語り、町の歴史を教えてもらい、気づけば半日が過ぎているのだとか。2040年〜2050年には300人台になるとの予測もある町だが、町長はさらにこう語った。

「その300人っていうのは、きっとこの町がいいと思って選んだ300人だと思うんですよ。ここに住みたいという人たちです。そういう人が増えるようにしたいんです」

人影が見えそうな、廃墟となった笠置観光ホテル(写真:筆者撮影)

筆者は「廃墟ホテル」をきっかけにこの町に入った。さびれたホテルを抱える町とはどんな場所なのか、ここに住む人はどんな人なのか、どんな思いがあるのか。まさか町長から「日本の最先端」という言葉が飛び出すとは予想もしていなかった。

笠置町内の様子(写真:筆者撮影)

人口が減ることも、産業に行き詰まりを抱えることも、笠置町だけの特殊な出来事ではない。それは日本の多くの町がこれから通る道だ。もちろん、町長の挑戦はまだ道半ばである。タブレットは配り終えておらず、町史編纂もこれから。人口減少そのものを止める妙手があるわけでもない。

それでも、衰退を悲観ではなく転換点として捉え直し、「選ばれる町」へ作り変えようとする発想は、この町が一足先に手に入れたものだ。10年後、笠置町がどうなっているのか。日本の多くの町が、その答えを必要とするはずだ。

《合わせて読む→→》前編:温泉が消えた「人口1007人の町」に観光客15万8356人…30年間解体できない《廃墟ホテル》と、100年ぶりに復活した「飲み物」

こちらの記事もおすすめ

あなたにおすすめ

ライフ

人気記事 HOT

※過去1ヶ月以内に配信した記事の閲覧数