「シビックプライドっていう言い方がよく出てますけど、やっぱりみんなが笠置町に誇りを持って、先人たちの誇りも、もう一回脚光を浴びれるような活動をしたいんです」
たとえ300人になっても、「この町を選んだ300人」に
こうしたアイデアが次々と湧いてくる背景には、山本さんなりのものの見方がある。制度や予算からではなく、まず目の前の住民と向き合うところから始まる政策の発想だ。また、人口や観光客数など数字の上では弱小と捉えられがちだが、これこそを資源に使いこなそうとしている。
現在、山本さん自身の日常はこんな感じだという。
「週末町を歩くと、あちらこちらで声をかけられて、1日帰ってこれないですよ。ちょっと駅前まで用事があるのに(笑)」
住民と夢を語り、町の歴史を教えてもらい、気づけば半日が過ぎているのだとか。2040年〜2050年には300人台になるとの予測もある町だが、町長はさらにこう語った。
「その300人っていうのは、きっとこの町がいいと思って選んだ300人だと思うんですよ。ここに住みたいという人たちです。そういう人が増えるようにしたいんです」
筆者は「廃墟ホテル」をきっかけにこの町に入った。さびれたホテルを抱える町とはどんな場所なのか、ここに住む人はどんな人なのか、どんな思いがあるのか。まさか町長から「日本の最先端」という言葉が飛び出すとは予想もしていなかった。
人口が減ることも、産業に行き詰まりを抱えることも、笠置町だけの特殊な出来事ではない。それは日本の多くの町がこれから通る道だ。もちろん、町長の挑戦はまだ道半ばである。タブレットは配り終えておらず、町史編纂もこれから。人口減少そのものを止める妙手があるわけでもない。
それでも、衰退を悲観ではなく転換点として捉え直し、「選ばれる町」へ作り変えようとする発想は、この町が一足先に手に入れたものだ。10年後、笠置町がどうなっているのか。日本の多くの町が、その答えを必要とするはずだ。


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