15分ほど歩き、少し小高い場所に来た。先ほどまで左手すぐの川原に転がっていた直径4mほどの巨大な岩は、はるか下に見える。
「もうすぐホテルが見えるはずです」
と言って、早歩きになる丸山さん。
筆者は遊歩道の真横に関西本線の線路があることを珍しく思い、カメラを準備した。フェンス越しに線路を覗き込むと、ちょうど1両編成の列車が通り過ぎた。ちょっとした探検に来たような感覚になった。
「ホテル、見えてきました!」
丸山さんを追いかけると、対岸中腹の濃い緑の間にグレーの建物が少し見えた。
対岸までは200mほど距離があり、肉眼よりカメラのレンズ越しの方がはっきりと見えた。剥き出しのコンクリート、もともと大きな窓があったのか、ガラスが破損しているので部屋の奥まで見える。スプレーの落書きが、壁のいたる箇所にあった。雨上がりだったせいか、光が当たらない部屋の中は薄暗い。
笠置観光ホテルは1962年(昭和37年)に開業。多くの観光客でにぎわった時期もあったが、その後は来客数が減少し、採算も悪化し、1990年代に閉業した。
立て直しを試みた経営者が次々と変わり、最後は個人の所有になった。しかし、30年以上経ってもホテルの再建にはつながらないうえに、町も勝手に解体や再活用することができない。また、周囲は落石の危険性もあり、その対策費用が町にとって大きな壁として立ちはだかるという。よって、「廃墟ホテル」として現在まで残っているのだ。
凝った造りが仇に、維持費だけが出ていく温泉施設
この町が持て余しているのは、廃墟ホテルだけではない。町の中心付近に「笠置いこいの館」という施設がある。1997年に開業した町営の日帰り温泉施設だ。当時は住民や観光客、キャンプ場客でにぎわっていた。しかし観光客の減少で採算が悪化、2019年に営業を終えた。


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