自動車には、それぞれのブランド価値がある。一時、日本車メーカーはどこも“壊れないこと”という、あまり名誉でないブランド価値を確立していた。
それとは対照的に、というと言い過ぎだが、イタリアのマセラティは“官能的”という、日本車が逆立ちしても手に入らなかったブランド価値を誇っていた。
26年になって、マセラティが今回の主題であるグレカーレをはじめ、「グランツーリスモ」と「グランカブリオ」に改良を施した際も、「ダイナミック」が真っ先にうたわれた。
ダイナミックとは、ご存じのとおり「動的」という意味。クルマにあっては動的性能、つまり「走りのよさ」を意味する。グレカーレ・トロフェオは、まさにそこを狙ったモデルだ。
マセラティのアニバーサリーイヤー
私がドライブしたのは、イタリアの端にあるトリエステの地。アドリア海に沿ってベネチアから時計まわりに海岸線を行った、クロアチア共和国との国境にある、歴史ある港町だ。
グレカーレを用意してくれたマセラティ広報部によると、「そこは交差点みたいな場所」だという。
「人、言語、文化の交差点であり。地中海の精神が中央ヨーロッパのそれと出合う場所。また、きらめくアドリア海と、カルスト地形(クロアチアは有名)の大地との間の場所でもあります」
今回のマセラティは、ことさらロマンチックだ。
「トライデントのロゴの100周年であり、タルガフローリオレースでの最初の優勝から100周年でもあり、記念すべき年にふさわしいドライブを提供したいと考えました」
ここではかつて、トリエステ―オピチナ間のレースが行われていた。それもマセラティの郷愁の一部だ。
別名「アップヒル・モンツァ」なるこのレースは、トリエステから山を越えて内陸の都市オピチナまで、駆け上がっていくもの。マセラティはここで、3回優勝を経験している。
そのうち、1960年のレースで勝者となったメナート・ボッファが乗ったのが、「ティーポ60“バードケージ”」だった。


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