熊本地震の発生から10日あまりが過ぎた。消防庁によると、8月5日時点の死者は38人にのぼる。
災害医療と聞けば、DMAT(災害派遣医療チーム)に代表される医療チームが被災地に入り、がれきから人命救助に当たったり、避難所などで救援活動に当たったりする姿を思い浮かべる人が多いだろう。
だが、こうした救急・災害医療は、被災地で求められる医療のごく一部にすぎない。
被災地で必要とされる「医療」とは
熊本県の集計では、被害が深刻だった宇城市と八代市の人口に占める避難所避難者の割合は、それぞれ6.0%、2.9%だ。もちろん、車中泊を続ける人や、親族宅などに身を寄せる人もおり、行政が把握する避難者数は実態を過小評価している可能性がある。それでも、被災者の大部分が、被害を受けた自宅や地域にとどまりながら「日常生活」を送っている。
筆者は東日本大震災以降、福島県浜通りの医療支援に携わってきた。そこで実感したのは、現地で必要とされる医療の大半は、慢性疾患の管理をはじめとする日常診療である、ということだ。
復興期の災害医療の中核を担うのは地元の医療機関だ。被災によって、地域住民の日常は一変する。仕事を休まざるを得ず、散歩をはじめとする屋外活動も激減する。さらに、被災者は尋常ではないストレスにさらされ続けている。
このような生活環境の変化が、高血圧や糖尿病といった生活習慣病を悪化させることは想像に難くなく、また臨床研究でも示されている。


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