上村循環器科医院そのものの被害は軽微だったが、常磐病院があえてこうした医療機関を支援先に選んだのには理由がある。同院の院長の新村浩明医師は、「被害が深刻な医療機関は診療を停止する。むしろ大変なのは、被災を免れた医療機関。周辺から患者が殺到するからだ」と語る。
患者を受け入れる医療機関では診療負担が急増し、スタッフが疲弊する。新村医師は東日本大震災の経験を生かし、患者だけでなく、診療を支える医療従事者を支援する。
透析支援が難しい理由は、透析を担う医療機関の多くが民間であることだ。日本の災害支援体制は国や自治体に加え、日本赤十字社や国立病院機構などの公的機関を中心に構築されており、特定の民間病院を公的に支援することは難しい。
医療法人同士の広域支援体制の構築は喫緊の課題だが、実現は容易ではない。本来、日本医師会や関連学会が主導すべき問題だが、十分な議論は聞こえてこない。今後、早急に検討すべき課題である。
誤嚥性肺炎の増加も危惧
透析のほかに課題となるのが、誤嚥性肺炎の増加である。東日本大震災後の相馬市では、発災後3カ月間に高齢者の死亡率が約5割上昇。主な原因が肺炎、とりわけ誤嚥性肺炎だったことが明らかになっている。
相馬中央病院の森田知宏医師らの研究チームが、2017年10月に『疫学・地域保健雑誌』で発表した内容によると、被災後の医療・介護の現場では、人手不足から歯磨きなどの口腔ケアが行き届かなくなった。その結果、誤嚥性肺炎を起こす高齢者が相次いだ。
この研究成果は、10年前の熊本地震でも生かされた。
発災から約1カ月後、熊本赤十字病院の医師らは肺炎による入院患者が前年の約2倍に増えていると公表し、関係者に注意を呼びかけた。これを機に「口腔ケアで命を守る」という認識が支援現場に広がり、避難所での予防活動も強化された。


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