被災地で何が必要になるかを事前に見通すことは難しい。現場で試行錯誤を重ね、その経験と教訓を広く共有するしかない。今回の地震でいえば、熱中症対策が重要な課題となっている。
40℃にもなった熊本では多くの被災者が熱中症を発症している。現に8月2日には、車中泊中の70代の女性が熱中症の疑いで亡くなった。
参考になるのが、東京大学を中心とした研究チームが、2024年2月に『Environmental Epidemiology』に発表した研究である。彼らは、2019年9月の台風15号後の大規模停電による影響を分析した。停電は東京電力管内で最大約93万4900戸、千葉県内では約64万戸に及び、一部地域では復旧まで約2週間を要した。
このとき1万4912件の熱中症による救急搬送が報告されている。台風通過後の搬送は2.01倍に増え、影響は最大6日間続いた。電力使用量が20%低下した場合、暑さによる搬送リスクは2.32倍になったという。
この研究は、熱中症対策で最も重要なのは停電対策、つまり冷房であることを示唆している。
発災直後、熊本県内では最大約4万8000戸が停電したが、九州電力送配電は倒壊した電柱や断線した配電線の復旧を急ぎ、3日後までに高圧配電線への送電を完了した。その後も各戸の安全を確認しながら復旧を進めた。8月5日17時現在、公式情報では熊本県内に発生中の停電はなく、配電線単位ではほぼ復旧した。
問題は、避難所の冷房整備だ。熊本県内では、避難所に指定された公立小中学校の体育館や武道場など532棟のうち、冷房設備があるのは111棟、20.9%にとどまる。政府は被災後、スポットクーラー300台を現地へ輸送した。宇城市内の避難所で唯一エアコンがなかった松橋中学校武道場にも、8月3日に業務用エアコン4台が搬入され、設置工事が始まった。
熊本が培ってきた地域力
被災地で熱中症患者がどの程度発生するかは現時点ではわからないが、これまでの対応は迅速だったのではないか。近年の熱中症研究の蓄積、さらに熊本が培ってきた地域力の表れだろう。
災害へのレジリエンスを高めるカギは、地域で人を育て、専門性を蓄積することだ。そういう意味では熊本は医療に限らず、幅広い分野で専門人材の層が厚い。今後の熊本の災害対応、復興に注目したい。


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