富士そばを起こした丹道夫さんがご著書の中で「自分たちは不動産屋だ」とおっしゃっていましたが、立ち食いそばとはいかに駅前の目につくいい立地を押さえるかを競う商売です。
私が変えていったのは、その前提です。私が狙ったのは郊外の需要でした。最初にロードサイドに出店してみたところ、都心と同じメニューが同じように売れたんですね。
実は郊外出店にあたっては、ファミリー層を見込んでもう少し高単価なメニューを充実させようと思っていたんです。しかし、売り上げを分析してみたら、都心の売れ筋とまったく同じように売れていく。東京でやっているのと同じスタイルで郊外でやって、普通にっていうか想定したよりも受けちゃったんです。
小さな駅前が儲からないワケ
逆にうまくいかなかったのは、小さな駅前にある商店街への出店です。これまで4店舗ほど閉めていますが、よく考えてみれば、住んでいる方はいても、勤めに出る人は駅から電車に乗って違う町に向かってしまいます。
昼にいるのはご高齢の方やお母さんと子どもさん。大きな商店街であればそこで働く人が利用してくれますが、小さな町の小さなお店は家族経営が多く、外でご飯を食べませんから、うまくいかなかったのだと思います。
男性ならたいてい若い頃に駅近くで立ち食いそばを食べた記憶を持っています。立ったままつゆとそばをずずっとすすった思い出がある。私自身、高校生の頃に東京・神田駅前の名もなき立ち食いそば屋で天そばを食べるのが楽しみでした。立ち食いそばに関しては、皆さん味の原風景があるんですね。
だから、お客様がゆで太郎のそばを食べて抱く感想が「立ち食いそばなのに、めちゃくちゃうまい」なんです。私はむしろそれでいいと思っています。
ゆで太郎は最初から生そばを使っています。袋から出した茹で麺でも、乾麺でもありません。そもそもそば職人の方からすれば、そば粉が入っているかどうかもわからないような麺を「そば」と呼ばれることは心外なんだそうです。

