その一方、同じ富士山で昨年ごろから大きな火種となっているのが閉山期の遭難事故である。
富士山の夏山シーズンは、吉田ルートと須走ルートが7月1日から9月10日、御殿場ルート、富士宮ルートは7月10日から9月10日とされ、それ以外の期間は閉山期と呼ばれて登山道が通行禁止となり、山小屋も休業に入る。
登山道を管轄する山梨・静岡両県は、「閉山期には富士山に登らないで」と呼びかけて各登山道の入り口にバリケードを設け、世間的にも「閉山期の富士山は登山禁止」という認識が広く浸透している。
だが、厳密にいうと、閉山期の富士登山が100%禁止されているわけではない。
2013年に策定(21年に改定)された「富士登山における安全確保のためのガイドライン」では、「充分な技術・経験・知識としっかりとした装備・計画を持った者の登山は妨げるものではない」としている。
ただ、閉山期の富士山は11月下旬ごろから五合目付近が根雪となり、山頂部は6月下旬ごろまで雪が残る。
また、厳冬期の自然環境はヒマラヤにも匹敵するといわれるほどで、風は風速50メートルに達することもあり、強風に磨かれた雪の斜面は巨大な氷の滑り台と化す。
その過酷さゆえ、冬の富士山は生半可な登山者が登れるものではなく、豊富な経験と確かな技量を持つ者だけにチャレンジが許される山とされている。
1週間に2度も遭難した外国人男性
ところが、富士山自体に「半ば観光地化されて老若男女が登れる山」というイメージが付いてしまったためか、無知・無謀な者たちがろくに装備も持たずに、閉山期の富士山にのこのこ入り込んでいっては遭難するという事例があとを絶たない。
それは日本人にかぎったことではなく、近年は外国人の遭難も目立つようになっている。
とくに昨年4月、中国籍の27歳男性が富士宮ルートで1週間も間を置かずに2度にわたって遭難、救助されたことには批判が殺到し、富士宮市の須藤秀忠市長は「救助に向かう隊員は命懸け。救助費用も莫大なもので、個人負担にすべきだ」と激怒。
さらには2025〜26年の閉山期にも事故が相次いだことから、とうとう「閉山期の富士山を登山禁止に」という声まで上がりはじめた。
というわけで、閉山期の富士山については、救助費用の有料化や登山禁止などをめぐり、大きな論争が巻き起こっている。


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