有料会員登録 東洋経済オンラインとは
ライフ

富士山で1週間に2度遭難した外国人男性(27)公費での救助に議論百出…山に登るなら覚悟すべき"自己責任の取り方"

7分で読める
夏の富士登山
その登山、備えは万全でしょうか?(写真: yasuki/PIXTA)
  • 羽根田 治 フリーライター/長野県山岳遭難防止アドバイザー
2/3 PAGES
3/3 PAGES

しかし、これまでの一連の流れを見ていて感じるのは、「これは閉山期の富士山だけの問題なのか?」という違和感だ。

たしかに冬の富士山の危険度は国内でもトップクラスだと思うが、危険度のレベルでいえば3000メートル級の山や豪雪地帯の山も同等だろう。

標高の低い山にしても、富士山や北アルプスほど苛烈な自然環境になることはないものの、低い山には低い山なりのリスクがあり、遭難事故も決して少なくはない。

たとえば警察庁が毎年発表する山岳遭難事故の統計によると、遭難者数が最も多い山は東京の高尾山であるというデータが出ている。

高尾山の場合、年間300万人もの入山者があり、事故の態様も転倒など軽微なものがほとんどなので、〝日本一遭難者の多い山〟というレッテルを貼って危険さを煽るのはいかがなものかと思うが、事故が多いことだけは間違いない。

山の標高別に遭難者数を調査したデータは存在しないが、都道府県別の統計などから推測すると、高尾山に限らず、全国各地の標高の低い山でもかなり多くの遭難事故が起きているものと思われる。そしてそのなかには命を落としてしまった事故も少なからず含まれる。

この7月にも、長崎県平戸市の志々伎山(標高347メートル)で71歳の男性(単独行)が行方不明になり、5日後に遺体で発見されるという事故があった。

茨城県大子町の篭岩山(標高501メートル)では、仲間と2人で登山していた65歳男性が下山中に滑落して亡くなるという事故も起きている。

「登山は自己責任」の原則に立ち返ろう

一般的には「標高の低い山=安全な山」というイメージがあるが、それは誤った認識である。

低山にもさまざまなリスクがあり、判断や対処を誤れば遭難し、場合によっては死んでしまうこともある(それを広く知ってもらいたいというのが、『低山遭難』を著したいちばんの動機であった)。

そしてこのことは、遭難者を救助する側にもあてはまる。標高が低いから救助も容易だ、なんてことは絶対にあり得ない。

8/19(水)に『低山遭難』の刊行記念トークイベントを開催します。詳しくはこちらをご覧ください

どんな山であれ救助活動には常に危険が付きまとう。救助活動中や訓練中に命を落とした隊員は何人もいるし、レスキューヘリの墜落事故だって何件も起きている。

言いたいのはつまり、標高の高低に関係なく、また季節を問わず、どんな山にも必ずなにかしらのリスクがあり、ひとたび遭難事故が起きれば、救助に向かう隊員は命懸けである、ということ。

それは行楽シーズンの高尾山であれ厳冬期の北アルプルであれ、根本は同じことだと思う。閉山期の富士山だけがなにも特別なわけではない。

だからもし救助費用を当事者負担にするとしたら、閉山期の富士山だけではなく、一年を通して国内のすべての山、すべての登山者に適用すべきだろう。

救助費用の有料化は、法律的な絡みもあって実現へのハードルは高いようだが、「登山は自己責任で行なう」のが大原則なのだから、遭難して救助にかかった費用は、当事者が負担するのが“自己責任の取り方”というものだ。

今、相変わらず遭難事故は増え続け、閉山期の富士山問題などもあり、登山者全般に向けられる世間の目は厳しくなっている。そればかりか、登山という行為そのものも偏見の目で見られはじめているように感じる。

登山者は、今一度、登山の自己責任や救助費用の問題についてよく考えてみる必要があるいのではないだろうか。

こちらの記事もおすすめ

あなたにおすすめ

ライフ

人気記事 HOT

※過去1ヶ月以内に配信した記事の閲覧数