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「山に商売を持ち込みやがって」と罵られ…-15℃の寝袋生活、貯金150万で無職になった男が《名もなき山仕事》で生きるまで

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崖の上に座る松見さん
山の仕事を職業として確立しようと奮闘してきた松見真宏さん(写真:松見さん提供)
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「山にいる人たちでどう仕事をつくっていくか、ということに今はすごく熱中していて、やっていることに常に納得しています。ですので、山に登らなくなったことのストレスは、寂しいくらいないんです。実際、複雑な相談が来たときには自分も山に登っているので、まったく登れていないわけではないんですよ」

松見さんの表情は驚くほど清々しい。

人生は許可制ではない

2026年に入って、山屋として初めて社員を雇った。送電線の設置やメンテナンスなど、インフラ整備の仕事やクマ対策の仕事も急増し、2026年は、7月時点で昨年を上回る売り上げを見込んでいる。

現在は、代表の松見さんと社員5人の6人体制で、現場だけではなく、「名もなき山仕事」として宙に浮いていた仕事や、登山道のデータ化のほか、山との関わりをシステム化して、より持続可能な仕事にするための取り組みに着手している。

「社員の中には、家族とか親とか自分自身の固定的な考えをもとにキャリアを進んできたけど、どうしても山に惹かれてしまって、30代になってからリスクをとって山の仕事に飛び込んだっていうスタッフもいて。今すごくいきいき働いています」

松見さんは、山がもたらす変化やさまざまなものを包摂する多面性に惹かれてきたという(写真:松見さん提供)

松見さんのモチベーションは、百名山に登りたいということでもないし、世界最高峰に挑戦したいということでもない。かつて、好奇心が移ろうままに迷子になっていた松見さんの目に映った、山という場所がもたらす変化や、さまざまな生き方を包摂する多面性だ。

「確かに山は地形的に特殊な場所ではありますが、土地の種類の一つに過ぎないですよね。僕は、街にある仕事は全部、山でも成立しうるという仮説を持っているんです」

山屋には、植物に詳しい人、安全に詳しい人、調査能力が優れている人、有事にチームワークを発揮する人など、山をフィールドにさまざまな方向の人が集まる。松見さんは、山にあらゆる面から関わることで生計を立て、山を暮らしの一部にしていきたい、と意気込む。

それにしても、誰もやっていない道を切り開いていくことに、ためらいはなかったのだろうか。

「人生を許可制だと思ったことがなくて。高専に退学届を持っていったときも、いま考えると親にはすごく心労をかけたなと思うんですが、自分で選択して動くしかなかったし、事後報告でした。今は家族に相談したり、折り合いをつけたりはしますけど。自分で道を選んで、責任を取って、一歩を踏み出して歩んでいくっていうのは、幸せに働いていくためには大事なことなんだな、と仲間を見ていて思います」

これまでなかった生き方を開拓する松見さんの姿は、未踏の山に挑む登山家と重なる(写真:松見さん提供)

「名もなき山仕事」を職業に昇格させ、人と山をつなぐ仕組みをつくる。誰の許可も得ず、道なき道を歩いてきた松見さんの姿は、未踏の山に挑む登山家と重なる。

松見さんは確かに今、“山を舞台とした新たな生き方”という「山」を登り始めているのだ。

《前編を読む→→》:「クマも山火事も他人事じゃない」50キロを担いで登る"山仕事のプロ"が警鐘《手入れされない山》がもたらす危険

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