それでは、実際に「お金」と「幸せ」の関係はどうなっているのでしょうか。最新の研究は、この問いに対して、非常に重要な示唆を与えています。109カ国/9万人以上のデータを分析した研究では、幸福度に最も強く影響していたのは、「収入の額」ではなく、「収入の順位(ランキング)」であることが明らかになりました(Quispe-Torreblancaら、2026)。
約80%の国において、「いくら持っているか」よりも、「周りと比べてどの位置にいるか」のほうが、幸福度に強い影響を与えていたのです。
つまり、お金を増やしても、周りも同じように増えていれば、幸福度は上がらない。さらに人は、「どれだけ差があるか」ではなく、「自分より上に何人いるか」で判断しています。極端に言えば、どれだけ努力して収入を増やしたとしても、周囲がそれ以上に増えていれば、満たされないままということです。
「人とのつながりがある人」は、お金に振り回されにくい
では、どうすればこの構造から抜け出せるのでしょうか。この研究は、そのヒントも示しています。それは、「人とのつながり」です。ある国際研究によると、社会関係資本(つながりや信頼)が高い社会では、収入順位が幸福度に与える影響が、最大80%も減少することが確認されています。
つまり、「人とのつながりがある人」ほど、お金に振り回されにくいのです。一方で、物質主義が強い社会では、収入順位の影響は3倍以上に増加します。比較や競争が強い環境ほど、人は不安を感じやすくなる構造にあるのです。
私はここで、ようやく気づきました。飲み会に行くお金がもったいないからと参加を断り、1円でも多く株に投資することばかり考えていた会社員時代の私があれほど苦しかった理由は、お金が足りなかったからではありませんでした。人と自分を比べ続けていたからだったのです。
振り返れば当時の私は、いつも「いくら持っているか」以上に、「周りと比べて自分はどうか」を気にしていました。誰かより少ないと不安になり、誰かより遅れている気がして焦り、もっと増やさなければ安心できないと思い込んでいました。
つまり私は、お金そのものに苦しんでいたのではなく、比較の中で揺れ続ける自分に苦しんでいたのです。
ここに、お金の悩みの本質があります。多くの人は、お金の不安を感じると、「もっと収入が必要なのではないか」「もっと貯めなければならないのではないか」と考えます。けれど、もし不安の正体が"足りないこと"ではなく、"比べてしまうこと"にあるのだとしたら、話は大きく変わってきます。


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