これが非常に重要であったことはサラ・チャンドラー氏の「多くをオンデバイスで処理していることは、エネルギー使用の観点から本当に有益です」という言葉からも読み取れる。AI処理の多くをオンデバイスで行うことは、アップルにとって『Apple 2030』を達成するためには不可欠の要素だったのだ。
『カーボンフットプリント・ネットゼロでAIを使う方法』
その上で、アップルの新OSにおいてもオンデバイスで処理仕切れなかった部分についてはクラウドAIを使用する。実際にデベロッパベータを使用した感想としては、グラフィック処理を含め、かなりの部分で通信を経由してPrivate Cloud Computeを利用しなければならないようだ。
アップルは、当初(WWDC 25時点まで)はデータセンターではApple Siliconを使うと言っていたが、WWDC 26ではNVIDIAのハードウェアと、Googleのクラウドインフラを使用すると訂正した。もちろん、機密性の高いシステムとなっており、暗号化された通信でクラウドに送られたデータもすぐに消去されることなっている。
このPrivate Cloud Computeで使うデータセンターの二酸化炭素排出に関しても『Apple 2030』の計画に「織り込み済み」だとサラ・チャンドラー氏は言ったが、その回答はオンデバイス処理について語った時ほどスムーズではなかった。ここからは筆者の想像になるが、データセンター利用についてはかなり逡巡があり、オンデバイスの処理をなるべく大きくして、クラウド側での処理を減らそうという苦労があったのではないだろうか?
ちなみに、ここでもアップルのアーキテクチャは工夫されており、ユーザーの要求をできるだけオンデバイスで行い、最低限の情報をクラウド側に渡すようになっている。
これはセキュリティを高めるための処理ではあるが、同時にクラウドAIの演算量を大幅に減らす効果もありそうだ。ユーザーのプロンプトの書き方次第でAIが無駄な演算を行うのはご存じの通り。オンデバイスでプロンプトやデータを整理してから最低限のデータをクラウドAIに渡せば、クラウドAIの演算量を低減できる。
今後、世界的にAIの演算量の大きさ、消費電力の大きさが課題になっていくと思われる。アメリカが共和党政権のうちは電力は使いたい放題かもしれないが、将来、政権が交代することがあれば消費電力の大きさも再び課題として挙げられるだろう。
そうなった時に、アップルの『カーボンフットプリント・ネットゼロでAIを使う方法』は大きな脚光を浴びるはずだ。

