有料会員登録 東洋経済オンラインとは
ビジネス

アップルは温暖化対策を優先しAI開発競争から降りたのか、オンデバイスAIとPCCの価値

11分で読める
虹色のオブジェ
Apple Parkの内側の庭園にある虹色のオブジェ。レディー・ガガの社内向けライブのために作られたが、評判がよく、長期的に保存されることになった(写真:筆者撮影)
2/5 PAGES
3/5 PAGES
4/5 PAGES
5/5 PAGES

これが非常に重要であったことはサラ・チャンドラー氏の「多くをオンデバイスで処理していることは、エネルギー使用の観点から本当に有益です」という言葉からも読み取れる。AI処理の多くをオンデバイスで行うことは、アップルにとって『Apple 2030』を達成するためには不可欠の要素だったのだ。

『カーボンフットプリント・ネットゼロでAIを使う方法』

その上で、アップルの新OSにおいてもオンデバイスで処理仕切れなかった部分についてはクラウドAIを使用する。実際にデベロッパベータを使用した感想としては、グラフィック処理を含め、かなりの部分で通信を経由してPrivate Cloud Computeを利用しなければならないようだ。

アップルデバイスはオンデバイスAIで扱いきれないデータを、暗号化してPrivate Cloud Computeで処理する。Private Cloud Computeで処理されたデータは安全に扱われ、処理後にすぐ消去される(図版:アップル提供)

アップルは、当初(WWDC 25時点まで)はデータセンターではApple Siliconを使うと言っていたが、WWDC 26ではNVIDIAのハードウェアと、Googleのクラウドインフラを使用すると訂正した。もちろん、機密性の高いシステムとなっており、暗号化された通信でクラウドに送られたデータもすぐに消去されることなっている。

このPrivate Cloud Computeで使うデータセンターの二酸化炭素排出に関しても『Apple 2030』の計画に「織り込み済み」だとサラ・チャンドラー氏は言ったが、その回答はオンデバイス処理について語った時ほどスムーズではなかった。ここからは筆者の想像になるが、データセンター利用についてはかなり逡巡があり、オンデバイスの処理をなるべく大きくして、クラウド側での処理を減らそうという苦労があったのではないだろうか?

現在、クラウドAIで行われる膨大な処理は、地球温暖化をさらに加速している。この問題に対処しなければならなくなった時に、アップルの方法論が参考になることだろう(図版:アップル提供)

ちなみに、ここでもアップルのアーキテクチャは工夫されており、ユーザーの要求をできるだけオンデバイスで行い、最低限の情報をクラウド側に渡すようになっている。

これはセキュリティを高めるための処理ではあるが、同時にクラウドAIの演算量を大幅に減らす効果もありそうだ。ユーザーのプロンプトの書き方次第でAIが無駄な演算を行うのはご存じの通り。オンデバイスでプロンプトやデータを整理してから最低限のデータをクラウドAIに渡せば、クラウドAIの演算量を低減できる。

今後、世界的にAIの演算量の大きさ、消費電力の大きさが課題になっていくと思われる。アメリカが共和党政権のうちは電力は使いたい放題かもしれないが、将来、政権が交代することがあれば消費電力の大きさも再び課題として挙げられるだろう。

そうなった時に、アップルの『カーボンフットプリント・ネットゼロでAIを使う方法』は大きな脚光を浴びるはずだ。

こちらの記事もおすすめ

あなたにおすすめ

ビジネス

人気記事 HOT

※過去1ヶ月以内に配信した記事の閲覧数