2026年7月28日、熊本県熊本地方で大きな地震が発生した。突然の激しい揺れが、いつもの暮らしを一変させる――地震への備えの大切さを、あらためて感じた人も多いだろう。では、人口や建物が密集する東京で首都直下地震が起きた場合、地域によってどの程度の被害が想定されるのか。
本稿では、東京都が22年5月に公表した「首都直下地震等による東京の被害想定」をもとに、島しょ部を除く東京都内の53区市町村の推計を比較した。
なお、東京都は26年5月、耐震化など特定の対策の進捗数値を反映した2024年度時点の都全体推計を示しているが、区市町村別の更新値は公表していない。このため、区市町村別に比較できる22年の被害想定を使用した。建物データと夜間人口は20年時点のものである。
今回取り上げるのは、複数の想定地震のうち、被害が大きく首都中枢機能への影響も大きいと考えられることなどから選定されたマグニチュード7.3の「都心南部直下地震」だ。数値は特定の震源や発生時刻、季節、風速などを設定したシミュレーション結果であり、実際の被害を予告するものではない。東京都も、条件を変えることで結果が大きく異なるとしている。
火災による焼失数、想定死者数・負傷者数、想定避難者数は、いずれも冬の夕方、風速8メートルという条件で推計されている。
東京都の被害想定は?
建物全壊棟数が最も多いのは足立区の1万1952棟だった。大田区が8538棟、江戸川区が6656棟、江東区が6600棟、世田谷区が6464棟で続いた。全壊棟数には、揺れ、液状化、急傾斜地崩壊による被害が含まれる。
火災による焼失数は、倒壊建物との重複を除いた数値で比較した。最も多いのは世田谷区の1万9293棟だった。大田区が1万7763棟、江戸川区が1万4421棟、足立区が1万2425棟と続いた。
人的被害では、想定死者数が最も多いのは足立区の795人だった。大田区が726人、世田谷区が645人、江戸川区が582人と続く。想定死者数には、揺れによる建物被害や火災のほか、屋内収容物の転倒・落下・移動、急傾斜地崩壊、ブロック塀等の転倒、屋外落下物による被害も含まれる。一方、避難生活や医療・ライフラインの支障などに伴う震災関連死は、人数として推計されていない。
発災4日~1週間後の想定避難者数は、大田区が31万3000人で最多となった。足立区が28万6932人、江戸川区が28万4088人、世田谷区が25万2337人と続く。
この推計における「避難者」は、避難所避難者と避難所外避難者を指す。自宅にとどまる人を含む、すべての被災者数を示したものではない。 避難者数は夜間人口を基に算出され、ピークは発災4日~1週間後と想定されている。
都心南部直下地震は、各区市町村にとっての最大被害を示したものではない。震源の位置や発生時刻、建物の耐震化・不燃化、防災対策などが変われば、被害や順位も変わりうる。今回は被害の実数を比べているため、人口や建物数など、自治体の規模の影響も受ける。各地域の安全性や地震危険度そのものを示すランキングではない点には注意が必要だ。

