技術がもたらす書類作成の効率化という恩恵の影で、採用選考の本来的な存在意義であるはずの「人間性の見極め」が、実質的な機能不全に陥っているという構造的なリスクと限界を、短歌の情緒的な調べに乗せて見事に表現した、批評性の極めて高い一首である。
内定辞退と超早期化で問われること
ここからは、【佳作】に入選した作品を抜粋して紹介する。まずは、劇的に変化する学生とのパワーバランスの中で、新たなコミュニケーション手法や関係性の再構築に腐心する人事の泥臭い奮闘を捉えた3作品を取り上げる。
内定辞退者を単なる「去りゆく他者」として見限るのではなく、将来の有望な中途採用候補者(タレントプール)として繋ぎ止めるという、近年の労働市場における採用戦略を的確に捉えた一句である。
せっかくここまで関係性を繋いできた優秀な人材を失う目前の敗北感と悔しさを、人事のプロとして呑み込み、「数年後の人材還流」に賭けて慰労の食事を共にする姿が描かれている。関係構築のゴールを「入社」ではなく「生涯の接点」へと広げざるをえない現代採用の過酷な競争と、人事担当者の割り切れない複雑な哀愁が、「奢る夜」という情景を通じて情緒豊かに描写された秀作である。
ハラスメントに対する社会的な警戒や価値観の多様化が進む中、いわゆる「Z世代」と呼ばれる若い内定者への連絡に細心の注意を払う人事担当者の苦悩を描いた一首。
世代間のギャップを埋める適切なコミュニケーションの正解を求め、生成AIにメール文面の添削を依頼したところ、AIから「Z世代への配慮が足りない」と逆に叱責され、修正を余儀なくされるという主客転倒のユーモアが際立っている。
テクノロジーの知性を介さなければ若年層との適切な対話すら危ういという、現代のデジタルコミュニケーションが抱える課題を、卓越した着眼点で描き出している。


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