1度だけ、ホクホク顔で「何を買おうかな」と明細を眺める正社員に皮肉を込めて「いいですね」と声をかけたことがある。すると「え? (メグミさんも)買えばいいじゃん。あ、派遣ってボーナスないんだっけ。かわいそー」と返された。
その社員に悪気がないことはわかっていたが、あまりに屈託のない口ぶりがショックだったという。
2020年に改正労働者派遣法が施行され、雇用形態による不合理な格差を禁じた「同一労働同一賃金」が導入されたときは、これで自分にもボーナスが支給されると期待した。しかし、それは早々に裏切られる。
背景にあったのは、派遣労働者の待遇を同一にする方法に「派遣先均等・均衡方式」と「労使協定方式」の2つがあったことだ。
1円も増えなかった年収
前者は比較対象が派遣先の正社員なのに対し、後者は同じような仕事に就く一般労働者。ボーナスを含めた賃金総額を、厚生労働省が公表する「同種業務に従事する一般労働者」の平均賃金水準以上にするというルールのもと、具体的には派遣元の労使協定によって決められる。
ただ、この平均賃金のデータには零細企業も含まれることから、後者の待遇は前者に比べて低くなりがち。多くの派遣会社が後者の方式を取っているとされ、業界最大手の1つであるメグミさんの派遣元も例外ではなかった。
結局、就業条件明示書に「ボーナスは時給に含める」という旨の一文が加わっただけで、年収は1円も増えなかった。
同じ“カラクリ”のせいで、賃金も変わらなかったという。メグミさんの派遣先は大手企業の関連会社だったこともあり、正社員の給与水準は自身の1.5~2倍だったが、その格差が埋まることはなかった。
「仕事ぶりを見たことのない『一般労働者』と比較されても……」。メグミさんにとって同一労働同一賃金は一片の納得感もない、絵に描いた餅同然だった。

