トスカーナ州(州都・フィレンツェ)の伝統料理の一つである「パンツァネッラ」とは、焼いてから数日が過ぎ、硬くなってしまったパンを再利用する料理。
硬くなったパンを水で柔らかく戻したら、トマトやきゅうりと合わせ、ワインヴィネガーとオリーブオイルで調味するだけという、とても簡単なサラダ料理だ。もちろん火は一切使わない。
サステイナビリティー度も高い夏の定番料理
「えー、水でふやかしたパン?」と思うことなかれ、新鮮なトマトやきゅうりの食感と、水で戻してちぎったパンが、野菜から出た水分とオリーブオイル、ワインヴィネガーの旨みと香りを吸い込んで、とても美味しい。サラダなのにパンも入ってお腹がいっぱいになるから、現代ではイタリア全国で夏の定番料理になっている。
キッチンに立ちたくない日は、こんなふうに美味しいオリーブオイルと塩、そして切るだけの食材があれば、たった10分で本格イタリアンが楽しめる。
実はイタリアには、硬くなってしまったパンを使ったレシピが各地にあり、この昔ながらの「パンツァネッラ」もサステイナビリティー度が高いと、環境問題や食糧廃棄問題に敏感な若者世代からも注目を浴びているのだ。
美味しさの決め手は、地元産にこだわるイタリア人に言わせれば「トスカーナ産の」香り強めのオリーブオイルを使うこと。だがフルーティーで青い香りと辛味を感じるようなオリーブオイルが手に入れば、日本でも美味しく出来上がること間違いなしだ。
余談になるが、トスカーナのパンは塩が入っていないことで有名だ。一般的なパンの塩分は粉の量に対して2%程度。一方、全く塩が入っていないトスカーナパンは、それだけで食べるとはっきり言ってまずい。ところが地元産の味の濃いサラミと一緒に食べるととても美味しいという、不思議なパンなのである。
なぜトスカーナパンに塩が入っていないのかというと、塩辛い地元のサラミや生ハムに合わせるためという説と、中世の時代、塩に高い税金がかけられていたから節約のためだったという説がある。どちらにせよ、とにかく塩味ゼロなので、イタリア語のパンツァネッラのレシピを見ると「トスカーナパンは塩が入っていないので、味付けの段階でしっかり塩を入れましょう!」と書かれていて、おもしろい。

