さて、私の出身地は佐賀県だ。数年前、佐賀市にできたマンションの一部住戸が億ションになったとして、県民の間で話題になった。佐賀はもともと圧倒的な戸建て文化で、マンションといえば長らく3000万円程度という感覚が強かったからだ。佐賀に住む両親からこの販売情報を聞き、私はおもわず呟いた。
「佐賀で1億のマンションって、誰が買うとよ? ここは佐賀よ? 4000万円あれば立派な戸建てが建つよ?」
私のこの、地元出身ならではの偏見に満ちた予想は見事に外れ、このマンションはしっかり完売したらしい。
東京ならいざ知らず、なぜ地方で1億円のマンションが飛ぶように売れるのか。購買層の主役は、東京の投資家でも外国人投資家でもなく、長年その地に根を張ってきた地元の富裕層である。1級ファイナンシャル・プランニング(FP)技能士の視点でこの現象をひもとくと、極めて冷徹かつ合理的な「相続対策」の計算が見えてくる。
世間では「タワマン節税はもう終わった」という論調だが…
前提として押さえておきたいのが、24年1月から適用された、いわゆる「タワマン節税」に対する新ルール(マンション評価通達の改正)である。
23年まで、タワマンの高層階は市場価格(時価)に対して相続税評価額が極端に低く、時価の3~4割程度で評価されることも珍しくなかった。この制度のバグに気づいた富裕層が、相続税対策としてタワマンを買いあさった。東京でタワマンの高騰が始まったのは15年ごろから。この価格上昇には富裕層ニーズも影響したと私は思う。

