「有害物質を食べさせるな」と抗議電話が殺到
「食用コオロギではうまくいかなかったが、ピボットして2~3年後には再起業したい」
無印良品(良品計画)と共同開発した「コオロギせんべい」や、自社ブランドの「コオロギ入りクッキー」などを、ファミリーマートをはじめ小売に流通させていたグリラス。徳島大学でコオロギの研究をしていた渡邉崇人氏が、研究費の獲得のため19年に立ち上げたスタートアップは、順調に規模拡大を見せていたはず……だった。
しかし、グリラスは24年11月、徳島地方裁判所に自己破産を申請した。負債総額は約1億5000万円、設立から5年での幕切れだった。渡邉氏自身も、起業家と研究者という二足の草鞋から、再びアカデミックの分野に戻ることを余儀なくされた。
前編でも詳報しているが、グリラスの経営が傾いた背景には、度重なる炎上やネガティブキャンペーンが経営悪化の一因となった。
もともとコオロギを食べることに対する嫌悪感があった中、20年頃から「環境負荷の低いタンパク源」として、好意的にメディアに取り上げられる機会が増えた。その後も河野太郎氏がコオロギを試食したり、学校給食に取り上げられたりと、コオロギ食の機運が高まることで、世間的には「このままだとコオロギ食が日常に入り込んでくるかもしれない」という不信感が高まっていく。
こうした漠然とした不安や反発は、根拠のない陰謀論と結びつき、特定の政党や反ワク勢力から批判されるように。「政府の人口統制に加担している」「コオロギを食べると5Gで操られる」といった言説が飛び交った。
当然グリラスも無傷ではいられなかった。社には「有害物質を食べさせるな」と抗議の電話が相次ぎ、対応に疲弊した社員は一人、また一人と離れていく。最盛期には50人ほどいた従業員も、最終的に5人にまで減り、前述の通り志半ばでグリラスは力尽きた。

