良品計画との協業を機に法人化を行い、20年5月には念願の『コオロギせんべい』を発売した。21年には、OEMで自社ブランドを立ち上げ、コオロギ粉末入りの冷凍パンやレトルトカレーを商品化。22年夏にはファミリーマートやセイコーマートなど小売りの棚にも進出し、販路を一気に押し広げていった。
渡邉氏も積極的に、リリースでの発信や、新商品の記者発表会を開き、メディアに対して働きかけた。同時に大規模な生産工場の建造も進め、スケールメリットを活かして、一気に先行投資を回収する青写真を描いていた。
しかし、メディアでの露出が多くなるほど、同時に「なぜコオロギがもてはやされているのか?」と懐疑的になる人も増えていく。
それまでゲテモノ扱いだった昆虫が、サステナブルな食材として浸透していくことで、どこか抵抗感や嫌悪感を感じるのも無理はない。コオロギをはじめとした昆虫は、甲殻類に類似したアレルギーを引き起こす可能性があり、食用コオロギの一般化に際して懸念や抵抗感を示すユーザーの声も散見されるようになった。
こうして露出が増えていく最中、昆虫食に対する抵抗感や、安全性に関する懸念は、一気に表面化していく。
河野太郎氏が「コオロギ太郎」と揶揄される事態に
“ボヤ騒ぎ”の始まりは22年11月。グリラスが学校給食にコオロギパウダーを使用したかぼちゃコロッケを提供したことだった。“学校給食”や“日本初”という文言とともに報道が出ると、アレルギーなどの安全面を不安視する声や、子どもに強制的に昆虫を食べさせることに対する苦言が溢れた。
ただ実態は、SDGsや食育を教える授業の一環として、希望者のみに提供したものであった。
そこから批判が強火になるのは、23年に入った頃だった。同年1月にグリラスは、「NTT東日本と提携し、コオロギの飼育効率を高める検証を行う」という旨のプレスリリースを打つ。渡邉氏は「このあたりから炎上が加速した」と顔をしかめる。
「NTT東日本がコオロギの施策を進めていると曲解され、一部のアンチに『大企業がコオロギを押しつけている』という誤解が広がっていきました。もちろんNTT東日本にまったく非はなく、むしろ将来的なタンパク質不足に貢献する前向きなプロジェクトなのに、世間的にはびこっていたネガティブな感情を刺激した結果になってしまった」
象徴的だったのが、河野太郎氏が「コオロギ太郎」と揶揄され、SNS上でトレンド入りした一件だ。グリラスが過去、河野氏にコオロギを提供した報道が蒸し返されたことで、ネット上では政府ぐるみの昆虫食推進を疑う声で溢れた。「推進派のコオロギ太郎」といったミームも飛び交い、後に河野氏が「フェイクニュースだ」と否定する事態にまで発展した。

