「創業当初から、コオロギを食べることへの嫌悪感や、安全面を懸念する声はありましたが、あくまで想定内の範囲でした。
それが本格的に炎上した頃には、ネット上での言説と、実情が乖離しすぎて、もうなす術がなかったという感じです。炎上の渦が大きくなっていた頃は、『コオロギを食べると5Gで操られる』とか、『政府の人口統制に加担している』とか、『コオロギには発がん性物質が含まれている』とか、根拠のないデマや陰謀論で溢れていました」
グリラス元社長の渡邉崇人氏は、炎上した当時をこう振り返る。機運の高まりを見せていたコオロギ食は、なぜここまで炎上に巻き込まれ、破産に追い込まれてしまったのだろうか。
ファミリーマートにコオロギ食が並んだ時期も
渡邉氏がグリラスを立ち上げたきっかけは16年、現在も籍を置く徳島大学で、教員のポストを得た頃だった。
それまでも渡邉氏は、コオロギを実験動物として、発生生物学や遺伝子工学(生物のDNAを人工的に操作し、人為的に特定の性質を改変したり、新しい機能を持たせる技術)の分野で研究を続けてきた中、教員になったことで研究費をどう獲得するかという問題に直面したという。
「簡単に言うと、コオロギの研究は『いったいなんの役に立つのか?』が理解されづらかった。それだけ私の研究は、アカデミックの分野では傍流と言われており、科研費が下りない可能性が高かった。
そこでコオロギの研究が、社会の役に立っていると分かりやすく示すため、食品廃棄物や食品残渣から食用コオロギを効率的に生産する研究を始めました」
それ以降は、コオロギ入り食品の商品化も進めていく中、月2~3社と打ち合わせを重ねていく。その中で、良品計画が好意的な反応を示してくれたことが転機となる。渡邉氏からすれば、良品計画と共同開発した商材が世に出れば宣伝ともなり、この上ない好機だった。
「無印良品と商品を出せれば、われわれにとっても大きなチャンスになるだろうと考えていました」と渡邉氏。

