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哲学の祖が警戒したもの
「もっと考えなさい」「批判的に考える力こそが大切だ」。そう言われて、異を唱える人は少ないだろう。私自身、哲学を仕事にし、企業で人々の「考える力」を育てることを生業にしている。
だが、その営みを続けるほど、一つの事実が重くのしかかってくる。西洋哲学の祖と呼ばれるプラトンその人が、「考える技法」を、若者に安易に教えることを戒めていたのである。
プラトンは、師ソクラテスを著作に登場させ、「よく生きよ」と説き、「よく生きるとはどういうことか」を問い続けた。善や美そのものを探究する生こそが、哲学者の生である。彼はそう考えた。
その一方で、プラトンは、思考の力が悪用されることを、強く警戒してもいた。
彼が危険視したのは、「弁証術(ディアレクティケー)」と呼ばれる思考の技法を、未成熟な人が扱うことだった。問いと対話を重ね、相手の主張にひそむ矛盾をあらわにしながら、真理や善へと迫っていく。ソクラテスが得意とした、あの問答法である。
一見すると、これ以上ないほど知的で、健全な営みに思える。では、なぜプラトンは、それを警戒したのだろうか。


