だからこそ今回の商品は興味深い。
冷やし中華や冷製まぜそばのカップ麺は過去にもあった。しかしそれらは「熱湯で戻した後に冷たくする商品」である。
5年の歳月をかけて完成させた「熱を使わない」カップ麺
今回の日清食品の挑戦は違う。最初から最後まで熱を使わない。必要なのは冷蔵庫でしっかり冷やした水だけだ。冷水を注ぎ、5分待ち、よくかき混ぜる。それだけで完成する。文字にすると簡単だが、これはかなり難しい技術革新だったはずだ。
一般的なカップ麺を水で戻そうとすると、麺は硬く、粉っぽく、ぼそぼそした食感になりやすい。熱によってデンプンを再び水和させる工程を前提として設計されているからだ。
それを冷水だけで成立させるために、日清食品は5年という歳月をかけた。実際に食べてみると、その苦労がよく分かる。
今回発売されるのは「鶏塩レモン味」と「ピリ辛キムチ味」の2種類だ。どちらも完成度は高い。しかし筆者が最も感心したのはスープではなく麺だった。
冷水で戻した麺と聞くと、多くの人は「多少は妥協した食感だろう」と想像するのではないだろうか。
ところが実際はそうではない。しっかりとした弾力と強いコシがある。すすった時の感覚も自然で、「冷水だから仕方ない」というネガティブな印象はほとんどない。
もちろん通常のカップヌードルとは違う。しかしそれは劣化ではなく、冷たいカップヌードルとしての個性だ。むしろよくここまで仕上げたなと感じるレベルである。この麺が成立しているからこそ、「冷しカップヌードル」という商品自体が成立している。
今回の商品の価値は、レモン味やキムチ味といったフレーバーの新しさではない。「冷水だけで麺を戻す」という技術そのものにある。

