みんなが無駄だと思っている作業がなぜなくならないのか
組織の「慣性」を支えているのは、何も共同体の上層部だけではない。現場の最前線においても、また別の、しかし同様に強力なロジックで慣性の力が働いている。
仮に若手社員が、仕事の手続きを抜本的に簡略化するアイデアを思いついたとする。「この作業、今まで2時間かかっていたのが、このツールを使えば30分で終わりますよ」という新しい方式を提案したとき、彼はきっと、会社に貢献する素晴らしい提案として歓迎されると確信しているはずだ。
ところが期待に反し、現場のベテラン社員や同僚から返ってくるのは、冷ややかな、あるいは警戒心に満ちた反応であることが少なくない。
「そんなに早く終わらせて、浮いた時間に何をさせるつもりだ」
「もし新しいやり方でミスが出たら、誰が責任を取るんだ。今のままでいいじゃないか」
こうした反応を耳にするとき、彼は現場には効率化とは真逆のベクトルを持つ、奇妙な力学が働いていることに気づかされるだろう。

