ここで、1つの調査結果を見てみたい。私が実施した「2022年ウェブ調査」において、「無駄な仕事だとわかっていても、そのまま続ける場合がありますか?」と尋ねたところ、実に63.6%、およそ3分の2の人々が「ある」と回答した。なぜ、これほど多くの人が「無駄」を自覚しながら、それをやめようとしないのか?
もちろん、現場の社員には「従順な部下」という信頼を傷つけたくないという心理や、上司に対して角が立つことを言いにくいという理由もあるだろう。しかし、「従順な部下」という仮面の下では、実はもっとしたたかで現実的な「損得計算」が働いていることが多いのだ。
一言で言えば、改善などせず、無駄な仕事をそのまま続けていたほうが「自分にとって得になる」という構造が存在するのである。
「効率的に仕事を終わらせる」ことの会社員的デメリット
まず挙げられるのが、残業代の問題だ。成果ではなく「働いた時間」に対して報酬が支払われる日本の多くの職場では、どんなに無駄な作業であっても、頑張って長時間働けば、当然ながら超過勤務手当が支給される。
もし画期的な効率化が実現し、毎日定時で仕事が終わるようになったとしたら、残業代を前提に家計を支えている人間にとっては死活問題となる。仕事の分担が曖昧で、個人の貢献度や具体的な成果を客観的に評価しづらい日本企業では、このような「不合理な超勤稼ぎ」が、生存戦略としてまかり通っている現実がある。
また、評価の側面も見逃せない。部下としては無駄だとわかっていても、がむしゃらに汗をかいて働いている姿を見せたほうが、「あいつは頑張っている」というアピールにつながりやすい。逆に、要領よく仕事を効率化し、涼しい顔をして定時に帰るようになれば、それが必ずしも正当に評価されるとは限らないのだ。ゆとりを持って仕事をしていることが、人事考課における「情意面」(意欲や態度)でマイナスに作用する可能性さえある。

