「無茶振りを実現可能な状態までブレイクダウンするのは、比較的得意なんです」
そう笑う。その力が生きたのが、コロナ後の回復局面だった。2023年5月、新型コロナは5類へ移行した。ただ、企業活動がすぐ元に戻ったわけではない。大手企業が本格的に動き始めたのは、その少し後だった。テレワーク中心だった会社が会議を再開し、展示会や研修、イベントも戻ってきた。
「2023年の下半期くらいから、宅配弁当の売り上げが一気に伸びていく感覚がありました」
森尾さんはそう振り返る。止まっていた時間が、ようやく動き出したという感覚だった。
業界でベンチマークされる存在へ
2026年5月、新木場工場の増設が始まった。投資額は4億8000万円。炊飯専用の新設備と広い仕分けスペースを加え、これまで受け切れなかった注文にも対応できるようになる。投資回収は約2年を見込む。
「10年前は同業他社の商品をベンチマークして、『どうやって超えるか』ばかり考えていました」
そう振り返る森尾さんは、少し間を置いて続けた。
「今は逆に、僕らがベンチマークされる存在になってきたのかなと思います」
10年前、中抜きばかりが利益を生む構造に違和感を覚えた。だから産地から直接仕入れ、自社で作り、自社で届ける仕組みをつくった。
効率化が進む業界で、手作りの玉子焼きもやめなかった。冷めてもおいしい弁当を目指し、王道メニューを磨き続けた。
一つひとつは地味な選択かもしれない。しかし、その積み重ねが今の塚田農場おべんとラボをつくった。そして今、そのやり方を見ているのは顧客だけではない。同業者もまた、塚田農場おべんとラボを見ている。

