なぜ、あごの不調がこれほどまでに全身の骨格や筋肉の凝りに影響を与えるのでしょうか。それを理解するために欠かせないのが、身体を包むボディスーツのような「筋膜(ファシア)」のつながりです。
筋肉は、筋肉同士が筋膜という膜を介してチェーンのように全身で連結されていると考えられています。筋膜はすべての細胞を包んでおり、もし骨格がなくなったとしても筋膜だけで人の形がわかると言われるほど、生物の形を決める重要な存在なのです。そして、あごや頭部の周辺は、眉上から背中、足裏までをつなぐ筋膜ラインの「最上流」に位置しています。
あごは全身の筋膜を引っ張る「最上流」
この仕組みをわかりやすく理解するために、身体を「全身タイツ」で考えてみましょう。一番上にある「あご」、つまりタイツの最上流の部分を手で強く握りしめたとしたら、その「引きつれ」はどんどん下へと伝わっていき、背中やつま先の生地までが突っ張って動きが制限されてしまうはずです。このイメージと同じことが人間の体内でも起きています。
あご周辺の筋膜が過酷なクセや過剰な緊張によって硬く縮こまると、その強い引きつれが首を前方に引っ張り出します。これがストレートネックを引き起こす原因となります。さらに、その引きつれは肩を内側へと巻き込ませて猫背を定着させ、最終的には骨盤の傾きや慢性的な腰痛にまで波及していくのです。
このようにあごから始まる引きつれが起きている状態で、いくら背中や腰をマッサージしたところで、根本的な解決には至りません。姿勢のクセを根本から正すためには、リセットボタンである「あご」の緊張を解くことが先決です。あごを起点として整えることで、全身の骨格は正しい形へと徐々に再構築されていくのです。

