例えば、試合前に強い緊張や不安に襲われたとします。そのときに「不安になるな」と自分に言い聞かせても、不安は簡単には消えません。むしろ、意識すればするほど、不安は大きくなっていきます。そこでまず行うのが、体を動かすことです。
ストレッチをする。走る。素振りをする。ボールを打つ。声を出す。止まって考え続けていると、不安は頭の中でどんどん大きくなりますが、体を動かすと、意識の向きが変わってきます。不安そのものを消そうとするのではなく、体を動かすことによって、不安にとらわれ続ける状態から抜け出していくイメージです。
体に覚えさせれば、心の影響を受けにくくなる
また、反復練習によってメンタル面の安定につながることも無視できません。反復練習とは、素振りや1000本ノック、決まったフォームでの投げ込みなど、ある動作を体に刻み込む作業です。
動作が体に刻み込まれると、「迷い」が減ります。いざ本番という場面で、「何をすればいいのか」「どう動いたらいいのか」を体が覚えているからです。これによって、余計な不安や緊張から心を解放することができます。
ある親御さんから、「うちの子が、家のピアノではうまく弾けるのに、発表会になると緊張でミスをしてしまう」という相談を受けたとき、私は「緊張してもミスをしなくなるくらいまで、繰り返し練習するのがいいですよ」とアドバイスをしたことがあります。
実際に、人は自信のあることでは極端に緊張することはありません。反対に、自信のないことでは、過去の失敗が頭に浮かび、体がこわばります。
だからこそ、自信は頭でつくるものではなく、体を動かし、技を繰り返し、場数を踏むことで育てていくものなのです。
これは、ビジネスの現場にもそのまま当てはまります。
大事な商談やプレゼンの前に、ただ「落ち着こう、落ち着こう」と頭の中で考えても、なかなか落ち着くことができません。それよりも、会場の周りを少し歩く。冒頭で話す内容を、声に出して何度も練習し、体に覚えさせる。そうした行動のほうが、心を安定させる力になります。


