ファミリークローゼットの動線や洗面・脱衣の分離など、平屋でうまくいった仕組みが、形を変えてこのマンションにも反映されている。一方で、平屋の時代にはなかった発想も加わっている。このマンションではスマートホーム化を進め、照明はほぼすべて自動化した。自分でスイッチを押すことはほとんどなく、「平屋を建てた2012年には思いつかなかった暮らし方」だと大塚さんは笑顔を見せる。
リノベーションは「生き方の更新」
子どものころ住んでいた180m²のマンション、義実家の6LDKの二世帯住宅、自ら設計した35坪の平屋と移り住んできたわけだが、どの家にも不便があり、工夫があり、発見があった。その一つひとつが積み重なり、今の住まいに生かされている。完璧な間取りの家を追い求めなくても、どんな家でも自分の暮らしに合わせて整えられる。経験を重ねるなかで、大塚さんはそう確信した。
「このマンションも10年後、15年後にどうなっているかはわからないんですよね」
大塚さんはそう言って笑う。周辺では2043年に向けた再開発の計画があり、このマンションもいずれ建て替えが検討される可能性がゼロではないのだという。それでも大塚さんに迷いはない。「10年から15年この家を享受できれば、その先でどうなってもそれはそれでいいかな」とカラリと語る。
若いころは「広くて大きくてキレイな家がいい家」だと思っていたものの、家を建て、住み替え、他人の家にも関わるうちに、「いい家」の基準が変わったそうだ。いい家とは、今の自分の暮らしに合っている家だ。それは完成品ではなく、暮らしの変化に合わせて更新し続けるものだといえる。
「子どものころに感じた不便も、義実家での面倒くささも、全部が今の家づくりに生きている。もしこれから家を建てたりリノベーションを考えている方がいたら、今の暮らしのなかで"ちょっと嫌だな"と思うことを書き留めておくといいと思います。それが全部、次の家の設計書になるので」
変化を受け入れ、そのたびに住まいを更新していく。大塚さんにとってリノベーションとは、家の改修であると同時に、暮らし方――ひいては生き方そのものの更新でもあるのだろう。

