船は20分ほど走り、船長が「それでは皆さん、スタートしてください」と号令をかけました。私たちは一斉に事前に配られていたゴカイを適度にちぎって針に付け、サビキ入れの籠にツミレを詰めて、糸を垂らします。
錘(おもり)が棚に着いてから、少し巻き上げて、ツミレがカゴからいい感じに出て、魚を誘うように竿を揺らします。
「M、イソメ平気なの?」
ニョロニョロとミミズのようなイソメ、しかもこれをちぎって針にブスッと刺すのは、初めての人にはハードルが高いのではないでしょうか。M以外の3人は子ども時代に体験しているので、大した抵抗なくできましたが。
「うん、ちょっと気持ち悪かったけどもう大丈夫。手袋してるし」
真面目なMは、指導された通りのやり方で竿を振ります。一方、ミカンは「釣りよりも酒! 肴!」という人なので、何となく動作が雑です。ほかの人よりエサを付け替える頻度も低い気がします。
やった! 釣れました!
最初に釣り上げたのはHさんでした。
「やった! 釣れました!」
Hさんの声でミカンの奥にいたHさんを見ると、アジが1匹かかっています。
「やりましたね!」
「はい、とりあえずボウズにならなくて安心しました」
喜びの声を聞いているうちに、私の竿にも当たりが! 焦って勢いがつきそうになるのを抑え、適度な速度でリールを巻き上げていきます。
「やった! 私も釣れた!」
海面に魚が顔を出したときは2匹かかっていたんですが、1匹バレて海に落ち、1匹が残りました。アジを針から外し足下にある海水の入ったバケツに入れると、案外元気そうです。
よし、これからどんどん釣れるのでは? と張り切って餌を付け替え、糸を垂らしましたが、この後は全然気配がない。魚がいないのか棚が違うのか、餌も取られず、まったく反応がなくなってしまいました。左右を見ると、ほかの人も似たような様子です。そのまま、10分、20分と時間が過ぎていきました。

